裁判例⑥

大阪地判平成19年12月10日
(自保ジャーナル第1737号)
年齢: 19歳(事故時)
性別: 女子
職業: 大学生
事故日: 平成14年5月23日
傷害内容 :脳挫傷、外傷性くも膜下出血等
後遺障害等級: 高次脳機能障害1級(自賠責)
後遺症の概要
事故当時の意識障害の程度は刺激をしても覚醒しない状態であり、
脳挫傷の跡がはっきりしており、その後脳萎縮は進行している状態、
四肢麻痺の状態であった。

平成14年12月ころまでには声を掛けると理解を示すなど、遷延性意識障害
からの回復傾向がみられるようになった。

平成15年1月ころ、発語はみられないが仕種や発声等による
コミュニケーションがある程度可能になったが、依然として全介助の状態が
続いていた。

同年3月ころから発語がみられるようになり単文の会話によって意思疎通が
できるようになったが、失語はあり、四肢は不全麻痺で、ほぼ全介助の
状態であった。:同年10月31日に症状固定。記銘力障害、新しいことの
学習障害、集中力低下、業務遂行障害、感情面の障害、四肢麻痺、閉尿、
食事以外は全介助の状態であり、自賠責で高次脳機能障害1級1号の認定を
受けた。

素因(既往症)の内容
9級10号相当のてんかん
平成11年にてんかんと診断され、平成13年4月から病院で内服治療を
受けていた。

素因(既往症)の寄与割合: 0%(素因減額否定)

ア 本裁判例の内容
被告は、「平成11年ころ、電車に乗車中意識消失があり、病院に搬送された
結果てんかんと診断され、平成13年4月からは同病院の神経内科に
おいて内服治療を継続していた」「自賠責認定でも9級10号相当の
既存障害が存在する旨の認定を受けている」とし、少なくとも3割の
素因減額をする必要があると主張した。

裁判所は、9級10号相当のてんかんの既存障害があることや、入院中の
病院において「既存障害の存在を前提として、これに関連した合併症の
潜在的状態が生じうることを想定した看護計画が立てられていたこと」を
認めつつも、以下のように述べて素因減額を否定した。

すなわち、裁判所は
①「後遺障害の内容及び程度に照らせば、てんかんによる既存障害が、
原告の後遺障害の内容や程度に影響を与えたとは考えられない」、

②原告は平成13年4月から病院で内服治療を続け「服薬を継続する限りに
おいては、てんかん発作やめまい発現の可能性が、数ヶ月に1回程度又は
完全に発作を抑制しうる状態であり、かつ、日常生活に特段の支障を
生ずるようなものではなかった」、

③「本件全証拠によっても、てんかん症状によって、原告の生活等に何らかの
支障が生じていた事実を認めることができない」

として、被告側の素因減額の主張を採用しなかった。

イ 本裁判例の分析
本裁判例が素因減額を否定したポイントは、
①後遺障害の内容及び程度が重篤であること、
②事故前のてんかん症状が日常生活に支障を生ずるものではなかったこと
にあると思われる。




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