裁判例③

大阪地判平成15年2月6日
(交通民集36巻1号219頁)
年齢: 64歳(事故時)
性別: 女子
職業: 事務員
事故日: 平成8年7月19日
傷害内容: 左急性硬膜下血腫、左前頭葉脳挫傷、外傷性くも膜下出血、
左後頭骨・中頭蓋骨骨折、頭蓋底骨折等
後遺障害等級: 2級3号
後遺症の概要
本件事故により意識障害を伴う脳外傷を受傷した結果、意識回復後も
見当識障害ないし痴呆の症状が現れたため、入院治療が継続された。
平成10年7月31日の症状固定時には日常生活動作についてはほぼ
自立していたものの、生活全般にわたって監視を必要とする状態となり、
平成11年4月17日ころ、ほとんど寝たきりの状態になった
(平成12年2月19日に死亡)
素因(既往症)の内容: 脳梗塞、軽度の痴呆症状
素因(既往症)の寄与割合: 25%

ア 本裁判例の内容
本事案において、被告は、脳外傷の通常の回復経過や、被害者の長谷川式
検査結果が一旦は良好な数値(17点)まで回復していたことなどを理由に、
受傷から1年後の平成9年7月ころが症状固定時期であり、症状悪化の原因は、
脳梗塞や加齢の影響によるのであるから後遺障害の程度はせいぜい
5級2号程度であると主張した。

他方、原告は、被害者の症状は、被告が症状固定時期と主張する
平成9年7月以降も徐々に悪化していったから、同時期に症状固定した
ものとみることはできないと主張した。

裁判所は、症状固定時期について、
①脳外傷の回復経過は受傷した被害者の精神・身体の状況(既往症の有無等)
によって異なる可能性があること、

②知能検査の結果は被験者の体調や受験姿勢によって誤差や変動を生じる
可能性を否定しがたいこと

を指摘したうえで、入院治療を継続中であり、必ずしも症状が安定していた
とは言い難い平成9年7月をもって症状が固定したとはいえないとした。

後遺障害等級については、症状固定時点における長谷川式検査の結果
(9点。9点は高度痴呆に属する。)及び平成10年9月15日の
日常生活状況報告書等をもとに、2級3号に該当すると認定した。

そして、長期間の入院治療の後に被害者に重度の後遺障害が残存したことに
関し、被害者に脳梗塞及び軽度痴呆の既存障害(身体的素因)があった
ことが「一定程度」寄与しているものと考えられるとして、損害の公平な
分担の見地から、民法722条2項を類推適用して、2割5分の素因減額を
行なうのが相当と判断した。

イ 本裁判例の分析
本裁判例は、
①「症状悪化の原因は脳梗塞や加齢の影響によるものであるから、
症状固定時期は受傷から約1年後に到来する」という被告の主張を
排斥した点、

②「重度」の後遺障害が残存するに至ったことに関しては、既往症
(脳梗塞及び軽度痴呆)が「一定程度」寄与しているものと考えられる
として、2割5分の素因減額を行なった点に特徴がある。




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