裁判例②

京都地判平成15年1月31日
(自保ジャーナル第1491号)
年齢: 53歳(事故時)
性別: 男子
職業: 無職
傷害内容: 頭蓋骨骨折、脳挫傷、脳器質性精神障害
後遺障害等級: 1級相当(裁判所の判断。自賠責による認定は不明)
後遺症の概要: 幻覚、妄想、幻聴、攻撃的性格、注意力散漫、記銘力障害、
見当識障害、易怒性等。日常生活に著しい制限を受け、常時援助を要する状態。
素因(既往症)の内容: 26歳ころに発病した精神分裂症妄想型
(発病以来概ね就労せずに在宅のまま自閉的状態、不眠、幻覚妄想状態等)
素因(既往症)の寄与割合: 60%

ア 本裁判例の内容
本裁判例は、医師の「事故後の症状は、脳挫傷以前の精神分裂症の幻覚妄想の
増悪とは病像的にも経過的にも異質なものであるほか、認知機能や人格変化
などの脳損傷の後遺症を示している」との意見、事故前の精神分裂症による
通院経緯や事故後の治療経過に照らし、被害者が「本件事故により既往症で
ある精神分裂症の病態に質的変化を来したほか、認知機能や人格変化などの
脳損傷に起因する後遺障害が残ったものというべき」として、因果関係を
肯定した。

その上で、26歳ころに発病した精神分裂症妄想型の症状やこれに対する
治療状況にも鑑み、既往症が事故後の「症状の発現にかなりの程度寄与
していることも明らかである」として、民法722条2項の類推適用により
素因減額割合は6割が相当であると判示した。

イ 本裁判例の分析
本裁判例は、事故と後遺障害の因果関係を認めつつも、約30年前に
発病した精神分裂病の症状(自閉的状態の継続、妄想幻覚状態、何者かに
コントロールさせされる体験(させられ体験)、抗精神病薬の投与、不眠等)
や通院履歴、これと事故後の症状との関連性を詳細に検討した上で、
被害者の素因の寄与割合を6割と高めに認定した点に特徴があるといえる。

6割もの割合を認めた根拠としては、既往症が本件後遺障害の発現に
「かなりの程度寄与していることが『明らか』」として、「明らか」な
影響を認定できたためと考えられる。




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