裁判例①

名古屋地判平成14年9月27日
(自保ジャーナル第1484号)
年齢: 75歳(事故時)
性別: 女子
職業: 家事従事者
傷害内容: 脳挫傷、急性硬膜下血腫、外傷性くも膜下出血、
急性水頭症、外傷性内耳傷害
後遺障害等級: 2級3号相当(裁判所の判断。自賠責による認定は不明)
後遺症の概要
平成8年12月の症状固定時においては、歩行、立位、坐位ができず、
前頭葉に挫傷があり活動性に乏しく、また、尿意や便意がはっきりせず、
記憶ときどき不確かになるというものであった。
その後も状態が悪化し、平成10年6月の本訴提起時点においては、
殆ど寝たきり状態で、排尿排便不可能、食事も介護がなければ不可能で
常時介護を要する状態に至っていた(平成12年4月に死亡)。

素因(既往症)の内容: 高齢(事故時75歳)による脳自体の加齢変化・
可塑性の低下、受傷前より存在した年齢相応の脳萎縮
素因(既往症)の寄与割合: 20%

ア 本裁判例の内容
本裁判例では、自賠責による後遺障害等級認定は不明であるが、裁判所は、
上記症状固定時点における後遺障害を2級3号に相当すると認定している。

そして、被害者に顕れている症状は上記のとおり症状固定後も更に
悪化したものとなり、これは病院において1級3号に該当する旨診断
されたが、裁判所は、1級3号に相当する症状について、
「本件後遺障害に加齢による高次脳機能障害が加わって拡大、発現されて
いるものであると認められ、この拡大発現部分は、本件事故と相当因果関係は
肯認し得ない」と判示して相当因果関係を否定した。

加えて、上記2級3号相当の症状についても、相当因果関係は肯定しつつ、
事故時75歳という高齢に鑑み、鑑定を踏まえた上で、①脳自体の加齢変化・
可塑性の低下があり、一般に外傷からの回復が不良であること②年齢相当の
脳萎縮が受傷前より存在したと推定されることを根拠に、このような素因が
被害者の「予後の不良性・本件後遺障害の程度に相当程度寄与しているものと
認めるのが相当である」

と判断した。

そして、裁判所は、民法722条を類推適用して、被害者に生じた損害のうち、
症状固定後の付添介護費、逸失利益、後遺障害慰謝料について、過失相殺に
加えて更にその2割を減額するのが相当と判断した。

イ 本裁判例の分析
本裁判例は、主に、①症状固定後に加齢によって拡大した症状については
そもそも因果関係自体を否定した点、②症状固定時の後遺障害については
因果関係自体は肯定するも、鑑定結果(「高齢者の頭部外傷後後遺症認定では、
期間が経るにつれ、一見症状が悪化したように見えても、全て外傷に
よるのではなく、加齢による変化も考慮する必要がある。」「年齢相当の
脳萎縮が受傷前よりあったと推定できる。」等と記載)を重視し、損害の
公平な分担の趣旨から後遺症損害の2割を減額した点に特徴があるといえる。




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