まとめ

以上、胸腹部臓器、生殖器の障害に関する近時の裁判例を紹介したが、
逸失利益の肯否及び程度に関する判断は、当該臓器の損傷等と労働上の支障との関係が
如何ほど明確に主張立証できるかに関わると考えられる。

この点、同関係が認められなかった勃起障害(⑲)、精巣摘出(⑳)の事例では、
同障害に関する逸失利益は否定されている(もっとも、裁判例⑳では、
慰謝料増額事由として斟酌されている)。

胸腹部臓器の中では比較的事例の多い脾臓障害では、免疫力の低下、疲れやすさ、
風邪をひく頻度の増加が裁判例でも指摘されており(裁判例⑤、⑨乃至⑪)、
これらがもたらす労働能力の低下自体は肯定せざるを得ないであろうから、
改定後の基準においても、一定の範囲で逸失利益を肯定すべきと考えられる。

肝臓、腎臓、循環器の障害においても、将来的な病状発症の危険性(③、④、⑬)、
業務や日常生活上に対する支障(⑫、⑮、⑯、⑰、⑱)、疲れやすさ(⑬、⑭、⑯)等が
もたらす労働能力の低下に配慮し、相当程度の割合で労働能力喪失率を肯定するのが
一般的かと考えられる。

呼吸器障害においては、呼吸圧迫、困難等の障害がもたらす労働能力の低下は
比較的容易に想像できるところであり(①、②)、この関係が明確になれば
等級どおりの喪失率が肯定される可能性が高いと考えられる。

胸腹部臓器、生殖器の障害に関する近時の裁判例の数は、上下肢、脊髄等の
他の後遺障害に比べれば少なく、特に、脾臓障害の改定後の基準下での裁判例は
⑥しか見当たらない(しかも同裁判例では、脾臓摘出に起因する労働能力の低下や
これによる逸失利益の認定は明らかではない)が、今後の裁判例の集積を待ち、
特に当該臓器の損傷等と労働上の支障との関係についての検討を続けたい。




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