肋骨変形

ア 肋骨の機能
肋骨は,肋硬骨及び肋軟骨からなる左右12対の扁平骨で,前述のように胸骨及び
胸椎と相俟って胸郭を構成し,内臓を保護している。

イ 裁判例

(ア)労働能力喪失を肯定した裁判例

裁判例? 横浜地判平成11年11月15日(自保ジャーナル1379号)
年齢 固定時24歳
性別 男性
職業 大学生
原告の主張する傷害の内容 左多発肋骨骨折、血気胸、脾破裂
自賠責等級 併合7級(①脾臓摘出8級2号,②肋骨変形12級5号)
喪失率56%
裁判所認定等級等 不明
喪失率25%,喪失期間43年間(67歳まで)

原告の主張 原告は、スポーツインストラクターを目指し、その資質があり、
努力していたので、多岐にわたるスポーツインストラクターの資格を取得して活躍する
蓋然性が高かったが、本件事故によって生じた脾臓摘出、肋骨変形、疲れ易さ等により
その可能性が制約されることとなった。その労働能力喪失率は35%である

被告の主張 脾臓を摘出しても極端な労働能力の低下はない。
肋骨変形についても同様である。

【本裁判例の分析】
(1)裁判所は,原告は、中学、高校、大学時代を通じて、多岐にわたるスポーツに
すぐれた適性を示し、インストラクターなどスポーツ関係の仕事で生計を立てる可能性を
十分に有していたと推認できること、実際にその方面での就職活動をし意欲も
有していること、自賠責から脾臓摘出8級12号、肋骨変形12級5号、
併合7級との認定を受けたこと、脾臓には赤血球の生成、破壊、免疫作用、
貯血等の機能があり、脾臓が摘出された場合にはこれらの身体機能の特に免疫作用
(抵抗力)の低下、疲れ易さがあること、風邪をひきやすいことがしばしば
指摘されていること、原告に副脾が認められることが脾臓の機能をどの程度補うことに
なるのかについて未知数というほかはないこと、左の肋骨7本の骨折を負い、
うち2本が陥没変形したまま癒合し、運動に少なからぬ影響を与えていること、
これらの障害は、将来的にスポーツ関係の業務に従事するとすれば、就職の当初から
相当程度のハンディになることの蓋然性は、極めて容易に予測できること等を勘案すると、
原告の本件事故による労働能力喪失率は25%とみるべきとした。

(2)本裁判例は、原告のこれまでの経緯から今後スポーツ関係の仕事に就く可能性が
あることを前提に,肋骨変形障害が運動に影響を与えるとして,将来の就労との
関係から労働能力喪失を認めた。

裁判例? 横浜地判平成13年5月18日(自保ジャーナル1429号)
年齢 事故時50歳
性別 男性
職業 アルバイト
原告の主張する傷害の内容 左肩鎖関節脱臼、左第5ないし第8肋骨骨折
自賠責等級 併合11級(①左鎖骨変形12級5号,②肋骨変形12級5号)
喪失率20%
裁判所認定等級等 併合11級
喪失率20%,喪失期間17年間(67歳まで)

被告の主張 左鎖関節の変形及び左胸郭の変形の各後遺症のうち、後者については
骨癒合により機能障害、疼痛等は認められないから、労働能力を喪失させるものではなく、
12級に認定された前者の後遺症による労働能力喪失率である14%を基礎とすべき

【本裁判例の分析】
(1)裁判所は,原告は、併合第11級との後遺障害等級認定を受けており、
左胸郭の変形のため左手の動作や呼吸に際して痛みが伴い、円滑な動作及び力を要する
作業に困難を伴うことが認められること等を勘案すると、原告の労働能力喪失率については
20%と認めるのが相当であるとした。

(2)本裁判例は,変形障害によって現実に生じている支障を検討し,
併合等級の喪失率どおりの喪失率を認定した。

肋骨変形については,上記裁判例を含め,肋骨変形のみが後遺障害となっている
裁判例は見当たらなかったものの,併合事案において労働能力喪失を認めた
裁判例としては,東京地判平成14年1月29日(原告の職業が運転手であるところ,
運転業務に対する肉体的負担の大きさ等を考慮して,併合等級の喪失率表どおりの
喪失率を認めた)がある。

(イ)労働能力喪失を否定した裁判例

正面から肋骨変形による労働能力喪失を否定した裁判例は見当たらなかった。

ウ まとめ
肋骨変形に関する裁判例は少ないものの,肯定した裁判例では,将来の就労に必要な
「運動に少なからぬ影響を与えていること」を理由とし(裁判例?),
または現実に生じている支障を理由としている(裁判例?)ことから,他の変形障害と
同様に肋骨の変形によりどのような症状が生じ,就労にどのように影響するのかが
労働能力喪失の有無及び喪失率を決定する重要な要素になるといえる。




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