まとめ

まず,労働能力喪失を肯定したものにおいても,変形の存在だけで喪失を肯定したものは
見当たらず,就労に具体的な支障(痛みや運動制限)が生じていることを根拠に
しているものが多かった。

そのため,労働能力喪失を肯定しても,変形障害による支障の内容程度によっては,
喪失率を下げて判断するものが散見された。そして,喪失率を下げて判断した理由としては,
減収がないこと(裁判例??)や機能障害が生じていないこと(裁判例??)があげられる。

他方,自賠責等級認定よりも高い喪失率を認定した裁判例もあったものの(裁判例?),
自賠責で否定された著しい変形を裁判では認めて等級が上がったことによるもので,
12級の喪失率よりも高い喪失率を認定した裁判例は見当たらなかった。

これは,鎖骨変形の存在だけでは,喪失率を喪失率表より高くする理由がないことや
(もちろん,現実に就労に与える影響を考慮すると,職業がモデルである場合等
事情によっては,喪失率表より高い喪失率を認めることが妥当な事案もあろう),
痛みがあれば同じ12級の神経症状,運動制限の場合も同じ12級の
上肢関節機能障害と同様に考えれば足りるからであると思われる。

次に,否定した裁判例も,変形障害という理由から否定しているというわけではなく,
変形それ自体では労働能力に影響を与えないとの考えによるものと思われるから(裁判例?),
変形に伴い痛みや可動域制限等の支障が生じている場合には,やはり労働能力の喪失を
認めることが妥当であるといえる。

以上裁判例を検討すると,鎖骨変形の喪失率判断の視点としては,①変形の存在のみの場合,
②痛みが生じている場合,③運動制限が生じている場合,に大きく分けることができる
(平成●年赤本講演録)。

まず,①については,前述のように変形の存在だけでは労働能力の喪失を認めることは
困難とする裁判例が多く,他方変形の存在だけで労働能力の喪失を認めたものは
見当たらなかったが,例えばモデルといった外見を重視する職業の場合には,
外貌醜状と同様に考えて,変形それ自体で労働能力を喪失すると判断してよいものと考える。

この場合には,変形の存在自体で労働能力の喪失が生じているのだから,喪失期間を
制限する必要はないと思われる。もっとも,モデルといった仕事がいつまで続けられるのか
という問題は生じるであろう。

次に,②の場合にも,痛みが生じている以上,神経症状12級との均衡からも労働能力の
喪失を認めるべきであるといえる(裁判例???)。

もっとも,痛みの場合には喪失期間を制限しているものが散見された。
制限している裁判例は,痛みは,経年により緩和すると一般的に考えられていることから,
いわゆる12級の神経症状と同視して10年といったように制限しているものと
思われる(裁判例??)。

ただし,痛みであっても変形という器質的な原因によるものであることを重視して
10年に制限しないという判断もなされており(裁判例?),このことは神経症状で
あっても不整癒合等を理由とするものは10年という制限が妥当しないことと
パラレルに考えることもできるため,痛みの理由を詳細に検討することが重要である
(詳細は末梢神経の項目を参照されたい)。

最後に,③の場合には,①②の場合に比べて高い(14%に近い)喪失率が
認められやすいといえる(裁判例????)。そして,喪失期間についても,痛みと異なり
67歳まで(もしくは平均余命年数の半分まで)認めるものが多かった。これは,
変形が改善する性質のものではないことに加え,痛みのような馴れがないことを
重視しているものと思われる。

以上より,鎖骨変形の場合には,変形から生じる症状を丁寧に検討した上で,
裁判例?に挙げたように,具体的な症状が就労に与える影響を主張立証していくことが
重要と思われる。




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