考察

以上、近時の裁判例を紹介したが、労働能力喪失率、喪失期間
については、
様々な判断が下されている。
これらの判断が下されるにあたり、当然のことといえるが、第一に、
障害の内容や程度が非常に大きく影響している。

醜状障害は、それ自体が身体的機能を左右するものではないので、
同障害による労働能力喪失は、当該外貌により当該被害者が否定的な印象をもたれ、
また対人関係や対外的な活動に消極的になる形で意思疎通が困難になることにより
招来されると考えられる。

そうすると、醜状が著しい分だけかかる意思疎通は困難になり、労働能力を喪失させる
といえよう。上記裁判例においても、著しいものではない単なる醜状障害の方が
逸失利益が否定されやすい(⑥、⑨、⑪、⑮)といえる。

この点、東京地方裁判所民事第27部所属の鈴木尚久裁判官は、平成22年に実施された
「外貌の醜状障害による逸失利益に関する近時の裁判実務上の取扱いについて」
と題する公演において、醜状障害が「円満な対人関係を構築し円滑な意思疎通を
実現する上での阻害要因となるのは容易に理解される」とし、外貌醜状による労働能力の
喪失については、このような「対人関係円滑化の観点からも把握する必要がある」
と説かれており、参考にしたい。

また、職業も重要な要素となる。鈴木裁判官のいう「対人関係の円滑化」という
観点から検討すると、ホステス(①、②)、喫茶店と居酒屋の接客業(③)、
取材対応に従事していた会社員(⑬)は、「対人関係の円滑化」が当該職業において
非常に強く要求されるものであることから、高い喪失率が認定されていると
考えることができる。また、この観点からすれば、「主婦であっても人と接する仕事は
少なくない」として、主婦の労働能力の喪失を肯定した裁判例⑩は、注目に値する。

更に、性別の違いによる喪失率の差異(女性の①~⑯に比べ、男性の⑰~○23では
否定が多い)も確認される。この点、鈴木裁判官は、「醜状障害による対人関係円滑化に
関する労働能力の喪失の程度には男女差があり、この場面では女子の方が客観的
ダメージは大きいと理解されている」と説明する。

しかし、後遺障害等級認定においては改正により同一の醜状について男女共通の
取扱いとされていることからすれば、裁判例にみられるような大幅な男女間の差異は
容認されるべきでないと考えられる。

この男女差が解消されるかどうかについては、改正後の基準が適用される事案の
裁判例の集積を待ちたい。

喪失期間は、醜状が永続すると考えられると、終期は67歳までになると考えられるが、
当該職業がいつまで継続するか(できるか)という観点から、期間に応じて認定する
裁判例も見受けられる(①、②、⑯)。




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