裁判例

裁判例⑪ 東京地判平成16年12月1日 自保ジャーナル1588号
年齢 52歳(症状固定時)
性別 男子
職業 バイク便(アルバイト)、ベース奏者
傷病名 右第4指挫滅創、右第4指中節骨開放骨折
自賠責認定等級(喪失率) 当時の12級9号(14%)
本判決認定喪失率 14%
喪失期間 52歳から67歳まで15年間
後遺症慰謝料 350万円

事案の概要  
本事案は、原告が、本件事故当時、就労時間の短いバイク便のアルバイトをしており、
その後を音楽の勉強に充てていたこと、右環指のみならず中指や小指にも本件事故の
影響を受け、薬指と中指でのピチカート奏法や全指を使った演奏ができなくなり、
将来の音楽の可能性が著しく狭められたなどとして、その損害の大きさは、
標準的な年収による12級の後遺障害による損害よりも少ないとは考え難いなどと
主張したのに対し、被告は、逸失利益は、原則として、被害者の事故前の現実収入額を
基礎として算出されるべきであり、原告が、音楽活動の対価として収入を得ていた
わけではないのであれば、逸失利益の算定に当たり、原告が音楽活動を目標に
していたことを斟酌すべきではないなどと主張したものである。

裁判所の判断  
裁判所は、原告の音楽活動に関する経歴を詳細に認定するとともに、原告の年収について、
事故前年の平成12年は204万2841円、平成13年は216万5744円でるが、平成13年は
本件事故日まで約8.5か月の収入であり、これを12か月分に換算すると、
305万7520円となる(小数点以下切捨て)ことを認定し、原告の収入にはかなりの
変動があるが、本件事故がなかった場合、少なくとも平成12年の年収と平成13年の
収入を12か月分に換算した額の平均値である255万0180円(小数点以下切捨て)
と同程度の収入を得られた蓋然性は認められるとしつつ、芸術の世界において、
技術的に優れた者が経済的に成功するとは限らないからこれを超える収入があった
蓋然性を認めることはできないとし、他方、原告の後遺障害は器質的なものであり、
原告が就くことが予想される職業等に照らし、喪失率を逓減させることが相当とは
思われないとし、労働能力喪失率14%、労働能力喪失期間を67歳まで認めた。

また、後遺障害慰謝料について裁判所は、原告は、齢40歳を過ぎながらも一念発起して、
将来音楽で生計を立てることを目指し、低収入に甘んじながらベースの練習に励んでいたが、
本件事故に遭い、貴重な時間を失うともともに、右手指全部を駆使した楽器の演奏に支障を
来したことは、慰謝料を算定する上で十分考慮されるべきであるとし、350万円を認定した。

裁判例⑫ 東京地判平成21年11月30日 自保ジャーナル1817号
年齢 41歳(症状固定時)
性別 男子
職業 信用組合職員
傷病名 右示指切断、右中指・右環指中節骨開放骨折
自賠責認定等級(喪失率) 9級13号(35%)
本判決認定喪失率 25%
喪失期間 41歳から67歳まで26年間

事案の概要  
本事案は、後遺障害等級9級に該当し、金融機関に勤務している原告が、もともと
右利きであったが、右手の後遺障害のため、右手で紙幣をめくり枚数を確認する作業に
支障が生じたり、コンピュータの入力業務等の業務についても作業速度が低下したりしており、
勤務先での業務遂行に支障が生じているとして、35%の労働能力喪失率を主張したのに対し、
被告が、原告は現実に勤務先を退職したわけでもなく、収入が減収したとの主張もないから、3
5%の労働能力を喪失したとするのは不合理であるとして争った事案である。

裁判所の判断  
裁判所は、原告が本件事故後に昇格し、本件事故により給料が下がることはなかったことを
認定しつつ、原告は右利きであったところ、後遺障害のため、上記原告主張のとおり
業務遂行に支障が生じていること、勤務先の円滑な業務遂行に影響を与えないよう
作業時間を延長するなどの努力をして作業効率の低下をできるだけ抑えてきたことを認定し、
これらの事実を総合して、原告は労働能力の25%を喪失したものとした。

手指に器質的損傷がない自賠責非該当事案において、
14%の労働能力喪失率を認めた裁判例

裁判例⑬ 名古屋地判平成21年2月27日 自保ジャーナル1797号
年齢 25歳(症状固定時)
性別 女性
職業 アルバイト
傷病名 左肩鎖関節脱臼(挫傷)、頸部挫傷
二次的に左手母指痙性内転位
自賠責
認定等級 非該当
本判決認定喪失率 14%
喪失期間 41年間(原告主張どおり)

事案の概要  
本事案は、自賠責等級非該当の原告が、左母指が「左母指外傷后痙性内転位
(限局性ディストニア)」と診断されており、同部分は内転位の状態で自動性が
全くないまま症状固定しており、これは「一手のおや指の用を廃したもの」にあたるため、
後遺障害等級10級7号、その他の後遺障害と併合して後遺障害等級9級の
労働能力喪失率35%を主張した事案である。

裁判所の判断  
裁判所は、原告の受傷内容、治療経過を詳細に認定した上で、後遺障害として、
左手母指痙性内転位の症状及び左肩・左上腕の痛み・だるさという神経症状が
残ったことを認定し、損害保険料率算出機構が、器質的損傷が捉えられず、神経損傷等の
異常所見も見い出せないとして後遺障害等級非該当としたことに触れ、それら器質的損傷や
神経損傷等の異常所見がないことは、直ちに本件事故と上記症状との相当因果関係を
否定する根拠となるものではないとし、治療経過を総合的に考察するときは、
本件事故と原告の左手母指の症状の発現との間には相当因果関係が認められる
というべきであるとした。

そして、後遺障害逸失利益について、後遺障害の内容、程度に加え、左手母指の症状、
左肩・左腕等の症状について今後改善する可能性がある一方、改善が確実であるとも
いえないこと等を総合して考慮し、労働能力喪失率については14%、
労働能力喪失期間は原告主張の41年間を認めた。さらに、後遺障害慰謝料については、
後遺障害の内容、程度に加え、原告がこれによって著しい身体的精神的苦痛を
被っていることを考慮し420万円を認めた。




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