裁判例

※労働能力喪失期間は明記無き限り就労可能年数(症状固定時の年齢から67歳までの
期間と平均余命の半分のどちらか長い期間)

※「[〇%]」は当該等級の自賠責における基準となる喪失率

a 股関節
   
【等級通りもしくは等級より高い労働能力喪失率が認定された事例】

① 東京地判平成20年11月12日 交民集41-6-1448
年齢 38歳(事故時)
性別 男子
職業 会社員
傷病名 右股関節脱臼骨折等
自賠責認定等級 併合4級(下肢関節障害、下肢短縮)[92%]
本判決認定喪失率 92%

概要
原告の具体的生活状況、すなわち、
①杖すら使用困難で歩行器を利用してわずかに前進できる程度であること、
②椅子に座る際は、手すりと背もたれがなければ上半身の姿勢を維持できず倒れる、
③入浴時浴槽の段差が越えられないなどを認定した上で、下肢関節障害(5級7号
のみよりも、下肢短縮(4㎝で10級8号)が加わった本件では、その程度は重いと
言わざるを得ないとし、上記喪失率を認定した。

② 名古屋地判平成19年2月7日 自保1723号
年齢 61歳
性別 女子
職業 不明(女性年齢別賃セが用いられていることから家事従事者と推測される)
傷病名 右足関節、踵部挫傷等
自賠責認定等級 併合7級[56%]
本判決認定喪失率 79%(併合5級と認定)

概要
左膝関節及び左足関節の機能障害が、可動域がかなりの程度制限されていること、
「通常歩行で膝崩れが頻発する」等からあわせて6級7号、左足関節障害が
12級11号と認定。

③ 大阪地判平成15年2月20日 交民集36-1-225
年齢 60歳(事故時)
性別 女子
職業 美容師兼家事従事者
傷病名 右大腿骨頚部内側骨折
自賠責認定等級 8級7号(股関節に人工骨頭置換)[45%]
本判決認定喪失率 45%

概要
美容師としての収入が明らかでないとされながら、少なくとも家事従事者として、
年齢に対応する賃セで逸失利益を算定した。ただ、上記喪失率は、原告が立ち仕事に
従事していることから、労働能力が著しく制約されるとして認定された。
 
ただし、平成16年の認定基準改正前の事例であることから、人工骨頭置換後の可動域制限が
問題とされないまま8級と認定された事例である。

④ 千葉地判平成20年6月23日 交民集41-3-740
  
年齢 58歳(症状固定時)
性別 女子
職業 家事従事者
傷病名 右大腿骨頚部骨折、右股関節痛
自賠責認定等級 12級13号(当時は12号)[14%]
本判決認定喪失率 14%

概要
原告は、右股関節の可動域制限が、主要運動たる外転・内転に関し、「著しい機能障害」
(1/2以下)に7.5度満たないものにつき、参考運動が健側と比して22%に制限されている
ことを考慮すれば「著しい機能障害」に該当すると評価されるべきと争った事案。

裁判所は、主要運動の可動域が1/2をわずかに上回る場合に、当該関節の参考運動が1/2以下に
制限されているときは「著しい機能障害」と認定すること、この「わずかに」とは、
原則として5度であり、股関節の屈曲・伸展などについて、「著しい機能障害」に当たるか
否かを判断する場合は10度とする、との認定基準を厳格に適用し、参考運動について1/2以下に
制限されている本件で、外転・内転について5度、屈曲・伸展については10度を加えても、
可動域制限が1/2以下には制限されていないこと、原告が訴える症状が痛みが主であることに
照らせば、外転・内転について、5度を加えるという原則を、あえて適用しないことが相当
であるとはいえないとし、「著しい機能障害」ではなく「(単なる)機能障害」と認定した。
 
  
【等級より低い労働能力喪失率が認定された事例】

⑤ 東京地判平成13年3月28日 自保1409号
     
年齢 19歳(事故時)
性別 男子
職業 会社員
傷病名 右大腿・膝・下腿骨開放骨折等
自賠責認定等級
併合4級(8級右下肢短縮、8級右股関節用廃、12級右ひざ関節機能障害、
12級右足関節機能障害)[92%]
本判決認定喪失率 79%

概要
原告が、事故後、就職し、約360万円の年収を得ていることから、4級相当の92%の
喪失率は認められないとしながら、通勤に際して最寄駅まで親の送迎が必要であること、
通勤や勤務において制限を受けていることから、上記喪失率を認定した。

なお、原告が今度さらなる手術を予定しており、これにより後遺障害はさらに改善される
との被告の主張に対しては、どのような後遺障害がどの程度改善されるかについて、
具体的な主張が無いとして、採用されなかった。

b 膝関節

⑥ 大阪地判平成20年9月8日 自保1781号
     
年齢 34歳(事故時)
性別 男子
職業 会社員
傷病名 右下肢開放粉砕骨折等
自賠責認定等級 併合5級(8級右足関節障害、10級右膝関節障害、9級右足趾障害、
13級下腿短縮等)[79%]
本判決認定喪失率 52%

概要

・膝関節可動域制限等につき、事故との因果関係が争われた事例。
裁判所は、膝関節に傷害を負ったものではないことを認定しつつも、運動障害が抜釘後に
生じており、抜釘時にかなりの骨欠損を生じていること、他に可動域制限を生じるような
原因がないことと等から、本件事故に伴う治療により運動障害が生じたとして、
事故との因果関係を認定した。

・事故後、仕事に特段の不利益が認められず、収入が年々増加している反面、事故後も収入を
維持しているのは原告の努力、周りの配慮等によるところが大きいとして上記喪失率を認定した。
  
【等級非該当であるが労働能力喪失が認められた事例】 

⑦岡山地判 平成5年8月27日 交民集26-4-1094
年齢 20歳(事故時)
性別 男子
職業 運送業
傷病名 左大腿骨骨折等
自賠責認定等級 非該当(膝関節可動域制限、短縮障害、下肢外貌醜状あるも
いずれも基準値に至らず非該当)
本判決認定喪失率 14%(4年)

概要
①事故時勤めていた運送会社を辞めた間接的な要因として、重い荷物を運ぶなどの作業に
苦痛を感じていたという事情があること、

②その後の職種としてタクシー運転手を選ぶなど、原告は、当時としては、右事故による
後遺障害のための稼働能力の一部に支障を来し、職種を限定する必要に迫られていた
事実が認められる、として、多様な後遺症状が複合して、労働能力に制限をきたす程度に
達していたと認めるのが相当とされた。
    
c 足関節

⑧大阪地判平成20年9月8日 自保1781号
     
年齢 34歳(事故時)
性別 男子
職業 会社員
傷病名 右下肢開放粉砕骨折等
自賠責認定等級 併合5級(8級右足関節障害、10級右膝関節障害、9級右足趾障害、
13級下腿短縮等)[79%]
本判決認定喪失率 52%

概要
・足関節用廃につき事故との因果関係が争われた事例。裁判所は、足関節用廃の原因となる
傷害を負っていること、治療経過において一貫した症状が所見されていること、
神経学的検査結果も整合性があること、複数の病院で測定した可動域値もおおむね
近似していること等を理由に、因果関係を認めた。

・労働能力喪失率については、膝関節⑥判例参照。




  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ページトップへ

0120-949-753

このページの先頭へ