【将来の義足費用に関する裁判例】

下肢切断の事案では、将来の義足費用が問題となる。

⑩福岡高判平成17年8月9日 交民集38-4-899
認定等級 4級5号
認定額 1919万9200円
交換1回あたりの
原告負担額 119万9950円
交換回数 3年に一度、平均余命まで16回の交換
中間利息控除の有無 無

概要
①原告は、左下腿部切断後、接合部分の皮膚が脆弱であるため、通常の場合より義足の交換や
修理を多く行う必要があるとされ、上記交換回数とされた。

②義足の購入ないし交換費用は、技術の発達に伴い、今後増大する蓋然性が高く、
原告の義足との接合部分の皮膚が脆弱であるということから認定回数より交換の回数が上回る
可能性が高い等の事情も考慮し、また、義足交換費用は、現時点においても確実に見込まれる
費用であり、将来交換の都度具体的に発生するものとはいえ、いわゆる積極損害の範疇にあると
考えられる点で、類型的に現在価値への換算が必要と考えられる将来の逸失利益とは性質を
異にするとし、中間利息を控除することをしなかった。

⑪さいたま地判平成16年8月23日 交民集37-4-1082
    
認定等級 5級5号
認定額 156万1825円
交換1回あたりの
原告負担額 46万3216円
交換回数 5年に一度 平均余命まで11回の交換
中間利息控除の有無 有

概要
義足の耐用年数は5年程度であり、平均余命55年間の5年毎の原価ライプニッツ係数を
乗じ上記金額を算定した。

⑫京都地判平成14年10月3日 自保1471号
    
認定等級 2級4号
認定額 1739万4704円
交換1回あたりの
原告負担額 下記概要参照
交換回数 下記概要参照
中間利息控除の有無 有

概要
①義足それ自体は骨格構造であり、耐用年数がないと認められるから、その交換は不要とされた。

②足部の耐用年数は1.5年と認められるから、原告のへ平均余命20年間に13回交換が
必要とされ、980万265円と算定された。

③ソケットの耐用年数は1年であることから、平均余命20年に20回交換が必要とされ、
609万9125円と算定された。

④フォームカバーの耐用年数は0.5年、すなわち1年に2回の交換が必要であることから、
20年間で149万5314円と算定された。

⑬大阪地判平成12年11月2日 交民集33-6-1796
     
認定等級 4級5号
認定額 67万5547円
交換1回あたりの
原告負担額 20万0358円
交換回数 5年に一度、平均余命まで11回の交換が必要
中間利息控除の有無 有
概要 年5分の割合によって中間利息を控除して算定した。

⑭岡山地判平成11年3月15日
    
認定等級 4級5号
認定額 23万1000円
交換1回あたりの
原告負担額 1万1550円
交換回数 3年に一度、平均余命まで20回の交換が必要
中間利息控除の有無 無
概要 特別な理由を述べることなく、中間利息を控除せず、算定された。

<解説>
上記裁判例の⑩~⑭の他にも、下肢切断の事案(裁判例⑥、⑧など)では将来の
義足交換費用について判断されている。

原告に必要とされる義足の耐用年数を認定し、平均余命から、今後必要な交換回数を
算出したうえで、義足の交換一回当たりの費用に必要な交換回数を乗じるという
簡明な計算方法によっている。

そして、上で挙げてきた裁判例中、⑩、⑭を除く裁判例は、中間利息が控除されている。
将来の義足交換費用は、逸失利益同様、将来長期にわたり発生する被害金額を、
一時払いするものであり、一時金を受領した被害者が、本来ならば、ただちに
手に入れられないはずの金銭を受領して利殖を行い、本来得られなかった利息を
得られることになって、不公平な結果となる、との考え方からは、大勢を占める裁判例の
結果は妥当ということになろう。
    
これに対し、高裁判例である裁判例⑩(福岡高判平成17年8月9日 交民集38-4-899)
では、中間利息の控除は行われていない。

当該判例は、その理由として、

○A「今後の技術の発達や障害に対する一般の意識の変化等に伴い、被害者の身体機能を
よりよく補うことのできるものが、生活場面に応じたタイプ別に、数多く開発される可能性が
高いということができる。そして、技術の発達による製作コストの減少の可能性を考慮に
入れても、その購入ないし交換費用は、今後増大する蓋然性が相当高度であり」、

○B「かつ・・・控訴人(原告)の事情からみて、控訴人の義足交換頻度が・・認定の頻度を
上回る可能性も相当程度見込まれる」(注:原告の義足との接合部分の皮膚が脆弱である
ということから認定回数より交換の回数が上回る可能性が高い等の事情)

○Cまた「義足交換費用は、現時点においても確実に見込まれる費用であり、将来交換の
都度具体的に発生するものとはいえ、いわゆる積極損害の範疇にあると考えられる点で、
類型的に現在価値への換算が必要と考えられる将来の逸失利益とは性質を異にする」

ということを挙げている。このうち、理由○A○Cは一般論を述べているに過ぎず、
将来にわたり義足交換を必要とする事案では基本的に当てはまる。とすると、理由○Bと
同等の事情、すなわち、単純に平均余命と耐用年数から算出した交換回数では、
足りない可能性が相当程度見込まれるという事情があるとき、換言すれば、
機械的に計算していると、実際に見込まれる交換費用として不当に低額となる可能性が
高い場合には、中間利息を控除しない方法で将来の義足交換費用が認められる可能性も
あるということになろう。




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