裁判例

a 上肢の全廃等

裁判例③ 仙台地判平成22年5月18日 自保ジャーナル1837号
年齢 28歳(事故時)
性別 男性
職業 給与所得者
傷病名 右腕神経叢引抜き損傷等、右上肢全廃
自賠責認定等級 5級6号
認定された損害項目の一部
ベッド代5万円、トイレ・風呂の改修工事代97万7074円
自動車改造費用42万5440円
事案の概要  
本事案は、「1上肢の用を全廃した」として、自賠責等級5級6号に該当する原告が、

①右腕を含め両手に力を込めて布団から起き上がることは不能で、どうしてもベッドでの
寝起きが必要であったとしてリフトを含むベッド代を、

②身体をきれいにするために左手での使用を前提としてのシャワー設備が必要であり、
トイレについてはウォシュレット付き様式トイレが必要であるとしてそれら改修工事代を、

③自動車改造費用を1回12万487円、耐用年数を6年とし、平均余命まで8回買替えが必要で
あるとして合計の改造費用を請求したのに対し、被告は、

①ベッド代については、一般的なベッド代が相当であるとし、

②風呂に関しては既存の浴槽の再利用を前提とし、さらに家族の便宜にもなるため
その6割の金額が相当であるとし、

③自動車改造費については認めた事案である。

裁判所の判断  
裁判所は、
①ベッドであれば床との間に数十センチメートルほどの高さがあるため、起きあがりが
楽になると原告が供述していることから、リフトまでは必要であったとはにわかに認め
難いとし、一般的なベッド代5万円を認め、

②風呂については既存の浴槽を利用してシャワー設備を導入することが可能であり、
またトイレについてもやや高額であるとも評価し得るとして、相当な改修工事代を
認定しつつも、同居家族が利益を受けることは反射的なものにすぎないとし、同居家族が
便宜を享受することをもって原告の損害額が減額されるのは相当ではないとし、

③自動車改造費については争いがないため、原告主張の金額を認めた。

 裁判例④ 神戸地判平成20年9月30日 自保ジャーナル1797号
年齢 34歳(症状固定時)
性別 男性
職業 会社員
傷病名 左手前腕挫滅切断、左大腿骨骨幹部骨折等
自賠責認定等級(喪失率) 併合5級〔左手全指用廃、左腕関節完全強直等〕(79%)
本判決認定
喪失率 62%
喪失期間 34歳から67歳まで33年間

事案の概要  
本事案は、自賠責等級併合5級に該当する原告が、事故前年度(平成14年)の年収と対比して、
平成17年度は51%、平成18年度は48%、平成19年度は46%の減収にとどまっているが、
本人の努力によるものであるとして、79%の労働能力喪失を主張したのに対し、被告は、
原告が現在の勤務先に在籍する限り次第に収入の増加も見込まれ、同社の経営も順調で
あるから一定の収入が得られる蓋然性もあり、労働能力喪失率は79%よりも低いとして
争った事案である。

裁判所の判断  
裁判所は、労働能力喪失率をみると、等級表5級に相当する原告の後遺障害に対応するのは
79%であるが、実際の減収は上記のとおりであり、しかもその割合は減少していること、
しかし、原告の減収がその程度にとどまっているのは、本人の努力に加え、勤務先の配慮に
よるものであり、なお不安定性も否定できないことに照らすと、79%と平成19年の減収の
割合である45.6%のほぼ中間である62%が、労働能力割合として平均的に将来にわたり
続くものとみるのが相当であるとした。

裁判例⑤ 横浜地判平成16年6月25日 自保ジャーナル1565号
年齢 29歳(症状固定時)
性別 男子
職業 航海士
傷病名 右上肢全廃
自賠責認定等級(喪失率) 5級6号(79%)
本判決認定喪失率 30%
喪失期間 29歳から67歳まで38年間
本判決認定後遺症慰謝料 2000万円

事案の概要  
本裁判例は、原告が、労働能力を79%喪失したと主張したのに対し、被告側が、
これを争った事案である。

裁判所の判断  
裁判所は、後遺障害等級5級6号に該当する後遺障害については、一般的にはこれにより
79%の労働能力が喪失するものと認められているところ、現実的には、原告は、本件事故後も
現在まで事故前を下回ることのない収入を得ていることを認定しつつ、

①原告がかかる収入を維持できているのは、勤務先の協力により、航海士の免状を
生かしてしていたそれまでの技術職から事務職に職種を替えてもらえたこと、

②原告は元来右利きであったところ、原告自身左手を右手の代用として賢明に動かし、
仕事に迷惑が生じないように不断の努力をしていることによるものであって、
また、

③前記後遺障害がない場合と比べての現実的減収がない状態が今後67歳まで継続する保証は
ないものと言わざるを得ない

として、67歳まで30%の労働能力喪失率を認めた。
また、後遺症慰謝料について、原告は航海士の免状を取って、技術職として、海底調査の
ロボットを操縦したり、その整備をしたりして、長年にわたり海を職場として働いてきたところ、
後遺障害のためにその仕事をすることが不可能になってしまったこと、それでも必要に
迫られて本来的には意に沿うものではない事務職として働いていることを斟酌して、
逸失利益について前記取扱をしたこと等本件にあらわれた一切の事情を考慮すると、
後遺症慰謝料としては2000万円が相当であると判断した。

b 肩関節の機能障害
裁判例⑥ 大阪地判平成15年12月24日 交民36巻6号1671頁
年齢 63歳(症状固定時)
性別 男子
職業 塗装工
傷病名 右肩腱板断裂等
自賠責認定等級(喪失率) 10級10号(27%)
本判決認定喪失率 27%
喪失期間 63歳から72歳まで9年間

事案の概要  
本裁判例は、原告が、後遺障害の内容として、右肩の著しい運動機能障害及び右上肢の
筋力低下、右手の痺れといった神経症状の併合9級に該当するとし、原告が、16歳のときから
本件事故で本件事故で負傷するまでの間、45年以上にわたり、塗装工一筋に稼働してきた
者であり、他に収入を得る職を知らない、本件事故によって塗装工として最も大切な
利き腕の機能に著しい障害を残し、今後終生塗装工としての業務に従事することが
できなくなった、また、現に失職し、将来においても塗装工として就労することは
不可能であり、その障害の部位程度及び年齢から判断して、原告が実際に他の職業について
収入を得る見込みも全くないなどとし、労働能力は100%喪失したに等しいと
主張した事案である。

裁判所の判断  
裁判所は、原告が、本件事故による腱板断裂によって後遺障害等級10級10号相当の疼痛を
伴う右肩関節の機能障害を遺したことを認定し、症状固定時から9年間にわたって、
労働能力の27%を喪失したと認めるのが相当であるとした。

原告の100%の労働能力喪失率の主張については、現在、原告の再就職を阻んでいる疼痛は
改善の見込みがあり、そうすると原告の塗装工としての技術及び経験によれば、後輩の
指導的立場で塗装工事現場に参加することは可能であると認められること、
原告の経歴からは、転職には困難を伴うことが懸念されるものの不可能とは言えない
ことからすると、原告の労働能力喪失率は27%程度と認めるのが相当とした。

裁判例⑦ 東京地判平成16年12月21日 自保ジャーナル1588号
年齢 70歳(症状固定時)
性別 男子
職業 指圧師
傷病名 右上腕骨頸部骨折、右肩関節脱臼骨折
自賠責認定等級(喪失率) 12級6号(14%)
本判決認定喪失率 20%
喪失期間 5年間
事案の概要  
本裁判例は、右肩関節脱臼骨折に伴う瘢痕拘縮を原因として右肩関節機能障害の後遺障害を
残した原告が、指圧師として経営していた治療院の売上げに対する原告の寄与割合に基づく、
事故前年度の売上げに対する事故翌年度の売上減少率から、労働能力喪失率を46.5%程度と
すべきと主張した事案である。

裁判所の判断  
裁判所は、後遺障害等級12級6号という自賠責の判断を自然かつ合理的なものとし、
労働能力喪失率について、労働省労働基準局長通牒(昭和32年7月2日基発551号)別表は、
後遺障害等級12級の労働能力喪失率は14%としているとしつつ、指圧師は、その治療業務
において、指先を使うばかりではなく、手指を患者の体に当てた上で、手指に対する身体の
体重のかけ方を微妙に調整するなどして施術を行うことなどからすれば、原告の後遺障害
(右肩関節の可動域制限のみならず、右肩ないし肘の痛み、右上肢のしびれ等も
含まれている。)による影響は大きいものと推認されるとし、このような事情を考慮すると、
原告の後遺障害による労働能力喪失率は20%と認めるのが相当であるとした。




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