第1 はじめに・第2 上肢の障害

第1 はじめに
上肢・下肢の後遺障害としては、切断、骨折、脱臼、神経麻痺などによる、
欠損障害、機能障害、変形障害がある。

第2 上肢の障害
上肢の後遺障害としては、切断、骨折、脱臼、神経麻痺などによって、欠損障害、
機能障害、変形障害が残存する。

1 上肢の構造
上肢の骨格および関節は、以下の図のとおりである。

2 欠損障害

ア 後遺障害等級認定基準

a 欠損障害の意義
上肢の欠損障害は、上肢の一部を失うことであり、ひじ関節以上か手関節以上か、
それが両上肢に生じたか一方の上肢に生じたかによって等級が認定される。

b 認定基準
等級 1級3号
後遺障害
両上肢をひじ関節以上で失ったもの
「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは次のいずれかに該当するものをいう。
(ア)肩関節において、肩甲骨と上腕骨を離断したもの
(イ)肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの
(ウ)ひじ関節において、上腕骨と橈骨及び尺骨とを離断したもの

等級 2級3号
後遺障害
両上肢を手関節以上で失ったもの
「上肢を手関節以上で失ったもの」とは、次のいずれかに該当するものをいう。
(ア)ひじ関節と手関節の間において上肢を切断したもの
(イ)手関節において、橈骨及び尺骨と手根骨とを離断したもの

等級 4級4号
後遺障害
1上肢をひじ関節以上で失ったもの
「上肢をひじ関節以上で失ったもの」については1級3号と同様

等級 5級4号

後遺障害
1上肢を手関節以上で失ったもの 「上肢を手関節以上で失ったもの」については
2級3号と同様
c 認定のポイント
上肢の欠損に関しては、離断、切断に関して客観的な基準が定められているため、等級自体の争いはそれほどない。

イ 裁判例
a 等級どおりの労働能力喪失率が認められた裁判例

裁判例① 京都地判昭和57年12月9日 自保ジャーナル・判例レポート第48号―№1
年齢 22歳(事故時)
性別 男性
職業 自動車整備士
傷病名 右上腕切断等
自賠責認定等級(喪失率) 4級(92%)
本判決認定喪失率 92%
喪失期間 症状固定(23歳)から67歳まで44年間
事案の概要
本裁判例は、自動車整備士であった原告について、自賠責認定等級どおりの
喪失率92%の労働能力喪失率を、67歳まで認めたものである。
b 等級よりも低い労働能力喪失率が認定された裁判例

裁判例② 大阪高判平成17年12月27日 自保ジャーナル1632号
年齢 31歳(症状固定時)
性別 男性
職業 会社員(営業)
傷病名 左上肢を肘関節以上で切断
自賠責認定等級(喪失率) 4級4号(92%)
本判決認定
喪失率 60%
喪失期間 31歳から67歳まで36年間

事案の概要  
本事案は、原告(控訴人)が、左上腕欠損という非常に重い後遺障害を負い、

①本件事故後は以前の営業ラインから外され、経理関係の仕事に従事することを
余儀なくされたため、パソコンの勉強を一生懸命に行ったこと

②事故後は出勤に相当な労力や時間がかかる上に乗用車での通勤をせざるを得なくなり、
朝早く自宅を出なければならなくなったこと

③事故後昇給がなく、定期昇給等が同期の者と比べ1年遅れになっており、原告の努力や
会社の配慮で何とか減収をストップしている状態であるが、景気が悪化すれば、真っ先に
原告がリストラされる可能性があり、その場合には再就職も困難といわざるを得ない
などとして、労働能力喪失率が92%であると主張したのに対し、被告(被控訴人)が、
①原告の年収は減収がなく事故前とほぼ同じであること②原告の労働能力は学習効果によって
健常者と遜色ないほどまで向上していること③原告の勤務する会社はかなり優良企業であり、
原告に対して減給を提案したこともなく、原告の現在の状況は、将来も長きに渡って継続する
蓋然性が高いとして、労働能力喪失に関する損害は、現実にはないか、あるとしても喪失率
は相当に低いとして争った事案である。

裁判所の判断  
裁判所は、控訴人には控訴人自身の努力と勤務先の会社の温情もあって、現実の減収という
事実が生じていないこと、控訴人の職務内容は、本件事故の前後を通じ、営業関係及び
経理事務等であって、特別な技能等を要する性質のものではなく、将来的に控訴人について
減収の事実が生じ、あるいは控訴人が勤務する会社に人員整理あるいは倒産という事態が
生じる蓋然性が高いとは認めるに足りないこと、これらの事情からすると、控訴人が何らかの
理由で現在勤務する会社を定年前に退職し、あるいは上記会社を定年で退職した場合における
再就職の際の制約をも考慮した上で、原審の認定した控訴人が67歳までの就労可能期間を
通じて60%の労働能力を喪失したものと評価したことは相当性を有すると判断した。

c 裁判例の分析
上肢の欠損については、1級から5級という高い等級が自賠責上認定されるため、
自賠責上の労働能力喪失率は高い。

しかし、上肢の欠損の場合には下肢と異なり、自賠責の労働能力喪失率と同程度の減収が
生じていない場合も見受けられる。

それでも裁判上は、現実の減収割合にとらわれることなく、今後のさらなる減収の可能性、
職を失う可能性、再就職の際の制約等を考慮し、労働能力喪失率を認定しているものが多く、
その点の主張・立証が重要になる。




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