神経損傷が肯定された裁判例

神経検査(テスト)による異常があり、その異常箇所と痛みの発生箇所(自覚症状)とが
整合する場合には後遺障害が認められる傾向がある。等級については、画像上の異常が
認められないため14級にとどまることが多いが、神経叢造影や定量筋電図分析での
陽性所見等を根拠に12級が認められた裁判例もある(裁判例24)。

【裁判例22】東京地裁平成13年10月30日(交民34・5・1462)
年齢 事故時38歳
性別 男性
職業 会社員
自賠責等級 不明
裁判所認定等級等
14級10号
喪失期間7年間
喪失率5%

【理由】
原告の訴える後遺障害の内容は、右環指のしびれ感、違和感、知覚障害、それによる
ワープロ作業等の仕事に関する制約状態であるが、これは、環指神経損傷による
組織破壊が強かったために、断裂前と全く異なる神経繊維同士の再吻合に伴って生ずる
同部位の知覚異常、筋機能低下が原因となっていると考えられ、これらの後遺障害の
内容は医学的な観点から説明可能な症状であり、稼働能力に一定程度の影響があるものと
評価することができる。

よって、後遺障害については、14級10号にあたり、労働能力喪失率を5%と
評価するのが相当である。

【裁判例23】神戸地裁平成12年11月20日(交民33・6・1904)
年齢 固定時33歳
性別 女性
職業 ピアノ講師
自賠責等級 不明
裁判所認定等級等
14級10号
喪失期間34年間
喪失率10%

【理由】
原告は本件事故により頸部捻挫の傷害を負い、他覚所見として頸部から両肩にかけての
著明な筋硬直が認められ、症状固定後も肩凝りを訴えて病院を受診したところ、
エックス線写真上、原告の第4、第5頸椎に不安定性が認められ、これが両肩の筋硬直の
原因となっているおり、以降その症状に対して保存的療法を施している。

MRI検査上、円板(関節窩と関節突起の間に存在する軟骨の円板)の位置はほぼ正常
との判断が出ている。

頸部捻挫、頸椎不安定症及び右尺骨神経麻痺については、その症状固定後も、肩の凝り、
右腕の痛み、しびれ感、握力低下の症状が残っており、その後遺障害の部位、程度、
14級10号の認定を受けたことに職業、性別、年齢等を勘案すると、原告は、
後遺障害により、症状固定時の年齢である33歳から34年間に渡りその労働能力を
10%喪失したものと認めるのが相当である。

【裁判例24】名古屋地裁平成17年8月30日(交民38・4・1172)
年齢 事故時23歳
性別 男性
職業 大学生
自賠責等級 不明
裁判所認定等級等
12級12号
喪失期間10年間
喪失率14%

【理由】
胸郭出口症候群とは、腕神経叢が胸郭出口において圧迫あるいは牽引刺激要因となり、
頸、肩、腕、ときに背中の痛みを引き起こす疾患群であること、原告について、
腕神経叢造影の陽性所見、定量筋電図分析での陽性所見、Morleyテスト右陽性、
Wrightテスト右陽性、Edenテスト右陽性などから、原告に胸郭出口症候群が
存在していたこと、右上肢に軽症ではあるが胸郭出口症候群が発生し、それを契機に
上肢症状が出現し、複雑な経過をたどって、現在における原告の症状の状態になったこと、
その症状は、右上肢について、右母指・示指がわずかに動く程度で、他は全く動かず、
原告の訴えや可動域測定数値(原告が痛がるために測定不能)を信じるならば、
1上肢全廃になるが、症状の経過を踏まえて判断すると、原告に筋萎縮や骨萎縮が
ほとんどみられないことなどから、ある程度の神経症状は存在するものの、
原告が自覚症状として訴える状況とは異なり、原告の右上肢はかなりの範囲で
使用可能であることが認められる。

本件事故により原告の右上肢の症状及び脊柱頸椎部の可動域制限並びに胸郭出口症候群が
発症したこと、すなわち、本件事故とこれらの症状との間の相当因果関係が認められる。
このうち、最も重要である胸郭出口症候群については、原告は、本件事故により本件傷害
(頸椎捻挫等)を負い、疼痛などにより右肩甲帯を動かさなくなり、このことにより、
僧帽筋等を含めた肩甲帯の筋群の筋力が低下し、肩甲帯が下がることで、腕神経叢の牽引や
肋鎖間隙での圧迫を増長し、胸郭出口症候群が発症するに至ったものである。

本件症状固定時以降、原告の右上肢に存在する症状については、骨萎縮及び筋萎縮の
状態並びに手指の皮膚の状態からは、上肢に全廃又は著しい障害が存在するとの所見は
得られないが、腕神経叢造影でTypeⅢ(片岡泰文、胸郭出口症候群の病態
-腕神経叢造影を用いて-、日整会誌1994;64)に該当することと、定量筋電図分析で
異常所見を得られていることから、他覚的所見ありとして、上肢に頑固な神経症状を残すもの、
すなわち後遺障害等級12級12号に該当するものであることが認められる。




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