過失相殺とは

交通事故の損害賠償では、「過失相殺」と言われることがあります。
これは、交通事故の被害者側にも、交通事故発生の原因となる何らかの事情があった
場合に、加害者に賠償させる金額をその事情の割合だけ差し引くという考え方です。

たとえば、損害が1,000万円だった場合に、被害者側の過失が10%であれば、
賠償される金額は、1,000万円の90%である900万円ということになります。

この過失相殺は、追突事故やセンターランオーバーによる事故、青信号対赤信号の
事故などを除き、ほとんどの場合に発生してきます。

「過失」というと、何か被害者側も悪いような言い方ですが、法律的には「悪い」
という意味ではなく、被害者側にも何らの事情がある場合に、その事情を考慮して
賠償額を決める、という意味と理解しましょう。

その意味で、信号のない交差点において、車やオートバイで優先道路を走っていて、
脇道から飛び出してきた車に衝突されたという場合でも、過失相殺が
発生してしまうのです。

この過失相殺については、裁判所も、弁護士も、保険会社も、全て同一の基準を
用いて算定しています。

算定の基準となるとは、東京地裁民事交通訴訟研究会編の「別冊判例タイムズ16号
民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂四版」(判例タイムズ社)です。
東京地裁には、民事27部という交通事故を専門に扱う部署があり、そこが中心と
なって作成していることから、全国の基準となっているものです。

ただし、過失相殺が事故の状況によって一律に決まるかというと、そうではありません。

この認定基準では、多数の事故態様について基本の過失割合を明確にし、
修正要素により、加害者側に5~20%程度過失を加算したり、被害者側に
5~20%程度過失を加算したりして調整を図っています。

そして、事故の具体的事情により、最終的に適正な過失割合に落ち着くように
作成されています。

ちなみに、加害者側に過失が加算されるのは、次のような場合です。

(1)住宅地・商店街における事故
(2)被害者(歩行者)が児童・老人
(3)歩行者が集団
(4)速度違反・飲酒・合図なしなどの道路交通法違反
(5)著しい過失・重過失

反対に、被害者側に過失が加算されるのは、次のような場合です。

(1)夜間
(2)幹線道路(歩行者の場合)
(3)横断禁止場所の横断
(4)速度違反などの道路交通法違反
(5)著しい過失・重過失

したがって、この判例タイムズのどの事故態様にあてはめるか、という事故態様の
確定が重要となります。

この事故態様については、事故現場の写真や、自分で作成した図なども使用されますが、
最も重視されるのは、警察が作成した実況見分調書です。

これは、被害者が取り寄せることもできますし、弁護士が取り寄せることもできます。

また、裁判所から文書送付嘱託によって取り寄せることもできます。

しかし、訴訟を起こしてから取り寄せるのでは、それだけ時間が無駄ですので、
過失割合が争点になりそうな事案においては、訴訟提起前に取り寄せておく方が
良いでしょう。

最近では、被害者が警察などに問い合わせて所在を確認し、自分で取り寄せてから
弁護士のところに持っていき、相談するケースも増えています。

交通事故の状況における過失ではなく、事故後の治療過程において、被害者に過失があり、
損害が拡大してしまった場合にも過失相殺の適用があります。

被害者は、交通事故の被害にあい、傷害を負った場合には、損害を拡大させては
ならない注意義務を負担します。

しかし、医師から指示された治療方針に従わず、それがために傷害が悪化して
損害が拡大したような場合には、その拡大した損害部分については、被害者側の
負担となります。

なお、過失相殺は、全損害額から差し引くと言いましたが、細かく言えば、健康保険、
厚生年金給付がある場合には、損害額から先に保険給付額を差し引き、その残額に
対し過失相殺をすることになります。

また、任意保険では、被害者側に過失があれば加害者の保険会社側は必ず過失相殺を
主張してきます。

しかし、自賠責保険の場合には、7割未満の過失は斟酌されず全額が支払われる
ことになりますので覚えておきましょう。

これは、自賠責保険の制度が、被害者の救済を目的に作られた制度であるからです。




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