裁判例 東京地裁平成16年2月26日判決

裁判例 東京地裁平成16年2月26日判決
(自動車保険ジャーナル第1537号)
年齢 48歳
性別 女子
事故状況
乗用車で一時停止中、反対車線から時速約50キロから60キロの
速度で右折進入してきた被告運転の乗用車に衝突された。加害車両は、
停止している被害車両の右前下部に同車両の下方から入力するような
状態で衝突し、原告は、衝突まで加害車両に気付かなかった。
本件事故により、被害車両のフロントバンパーの一部が大きく変形したほか、
右フロントサイドメンバー先端、クーラーコンデンサの下部も変形した。

後遺障害等級
原告主張:2級3号
自賠責:併合8級(9級10号、11級7号)
裁判所認定:併合10級(12級10号:神経症状、11級7号:脊柱変形)
原告の主張する傷害及び後遺障害
傷害:外傷性頸髄損傷、外傷性腰部神経根症、外傷性腰部椎間板ヘルニア
後遺障害:頸椎の運動制限、後頭部痛、背部痛、腰痛、
両上肢・下肢の痛みやしびれ、握力の低下、両上肢の痛覚脱失

素因(既往症)の内容 加齢性による脊柱管狭窄、後縦靱帯骨化等
素因減額 0%

ア 本裁判例の内容
本裁判例は、原告が「本件事故により、外傷性頸髄損傷・
外傷性腰部神経根症・外傷性腰部椎間板ヘルニアの傷害を負い、
頸椎の運動制限、後頭部痛、背部痛、腰痛、両上肢・下肢の痛みやしびれ、
握力の低下、両上肢の痛覚脱失の後遺障害が残った」と主張したのに対し、
被告が「脊柱の変形は本来不要であった本件手術によって生じたもので
あるから、本件事故による後遺障害とはいえず、上下肢の明らかな
知覚障害は本件手術前にはみられなかったものであるから、
原告の後遺障害の程度は、局部の頑固な神経症状として
後遺障害等級12級10号が相当である。」と主張して、本件事故と
後遺障害との相当因果関係及び後遺障害の内容・程度を争った事案である。

裁判所は、原告には脊髄損傷の他覚的所見が乏しいことから、
本件事故により原告に脊髄損傷が生じたものと認定することは
できないとしたうえで、本件事故による衝撃と原告の加齢性の変性が
あいまって、原告の頸・腰・両上肢の痛み・しびれ・左趾のしびれ等を
発症させたものと認めるのが相当であり、当該症状については
12級10号の後遺障害と認めるとして、その限りで後遺障害の発生
及び相当因果関係を肯定した。

そのうえで、裁判所は、原告の症状は、加齢性による脊柱管狭窄、
後縦靱帯骨化症等と事故による衝撃があいまって出現したものであるが、
原告の加齢性の変性が通常の加齢に伴う程度を超えるものであったことを
認めるに足りる証拠はなく(医師の意見書では、原告の脊柱管狭窄の程度は
年齢相応の変化であったとされている)、本件事故の加害者である被告に
被害者である原告の損害の全部を賠償させることが公平を失するとまでは
いえないから、本件において民法722条2項の過失相殺の規定を
類推適用して、素因減額をするのは相当ではないと判示した。

イ 分析
本裁判例は、12級10号の神経症状の限りで本件事故と後遺障害との
相当因果関係を肯定したうえで、被害者の加齢性の変性が通常の加齢に
伴う程度を超えるものであったことを認めるに足りる証拠はないとして、
素因減額を否定した。

上記理由付からすると、被害者の加齢性の変性が通常の加齢に伴う程度を
超えるものであったことを認めるに足りる証拠があれば、素因減額が
行われた事案と考えられる。本件は、被害者に存在していた加齢性の変性が、
個々人の個体差の範囲として当然にその存在が予定されているものを
逸脱することを示す立証がなかったため、素因減額を行わなかった
事案として位置づけられる。




  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ページトップへ

0120-949-753

このページの先頭へ