裁判例 大阪地裁平成4年3月26日

裁判例 大阪地裁平成4年3月26日
(自保ジャーナル・判例レポート第104号―No.2
交民集25巻2号397頁)
年齢 59歳
性別 男子
事故状況
乗用車を運転し赤信号停止中、飲酒前方不注視の小型貨物車に追突され、
10メートル余り押し出され、車は車体後部を中心に中破した。

後遺障害等級
原告主張:不明(79%の労働能力喪失)
自賠責:不明
裁判所認定:12級相当
原告の主張する傷害及び後遺障害
傷害:頸髄損傷
後遺障害:日常生活に介助が必要な後遺障害が残った
素因(既往症)の内容 頸椎後縦靱帯骨化
素因減額 0%

ア 本裁判例の内容
本裁判例は、原告が「本件事故により、頸髄損傷の傷害を負い、
日常生活に介助が必要な後遺障害が残った」と主張したのに対し、
被告が頸髄損傷の発生及び本件事故と後遺障害との相当因果関係を
争った事案である。

裁判所は、頸髄損傷は存しなかったものと認められるとして、
頸髄損傷の存在を否定した。そして、後遺障害につき、
①脊柱の運動制限及び歩行困難は、靱帯骨化そのものにより直接生じた
症状であることから、本件事故との間に因果関係はない、
②頭痛、めまい、背中の痛みといった神経症状は、靱帯骨化症が存する
場合に外傷を契機として発症する可能性は容易に肯認できるところであるから、
本件事故との相当因果関係は存するというべきで、その程度は12級相当に
該当するとして、本件事故との相当因果関係を肯定した。

そのうえで、裁判所は、①原告は、本件事故当時すでに頸椎後縦靱帯の
骨化が相当程度進行しており、骨化靱帯の脊柱管内に占める割合が
相当大きくなっていたため、頸椎後縦靱帯骨化症の症状が出現する寸前か
少なくとも容易に出現するような状態であり、本件事故がなくとも
遅かれ早かれ発症した可能性が相当あり、むしろその可能性の方が高かった
ものと推認せざるをえないが、②このような身体的要因を有するに至った
ことについて原告に責められるべき事情はないこと、③事故の状況に
照らせば、原告に後縦靱帯の骨化がなかったとしても、相応の傷害及び
後遺障害が発症した可能性は相当程度あるものと考えられるところ、
原告の症状は本件事故から1年余りの期間で症状固定とされ、本件事故と
相当因果関係のある後遺障害も12級程度のものにとどまっていること、
などからすると、原告の身体的要素が症状の拡大、長期化に寄与している
度合いは、それほど大きなものではないということができ、これらのことを
考え合わせると、素因に応じた割合的認定ないし寄与度減責をしなければ
損害の公平な分担を図れないとは認め難く、この点に関する被告らの主張は
採用しないとして、素因減額を否定した。

イ 分析
本裁判例は、12級相当の神経症状の限りで本件事故と後遺障害との
相当因果関係を肯定したうえで、原告の身体的要素が症状の拡大、長期化に
寄与している度合いはそれほど大きなものではないととして、損害の公平な
分担の観点から、素因減額を否定した。

裁判所は、被害者の既往症の程度が著しく(頸椎後縦靱帯骨化症の症状が、
本件事故がなくとも遅かれ早かれ発症した可能性が高い)、既往症が
症状の拡大・長期化に一定程度寄与していることを認めながら、
素因減額を否定している。

本裁判例は、既往症が結果へ寄与していることを認めながら、
損害の公平な分担の観点から、素因減額を否定した点が特徴的である。

なお、裁判所は、素因減額を否定するにあたり、後遺障害が
12級程度のものにとどまっていることを重視しているようである。




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