裁判例 京都地裁平成7年1月24日

裁判例 京都地裁平成7年1月24日
(交民集28巻1号67頁)
年齢 51歳
性別 男子
事故状況
時速約50キロで大型貨物自動車を走行していた被告は、
車間距離約24.7メートルの地点で、前方に原告車が赤信号で
停止していることに気付き、急ブレーキをかけたが間に合わず、
原告車後部に衝突した。衝突の衝撃で原告車は約12.4メートル
押し出されて停止した。原告車は、本件事故により、車両後部バンパー及び
ボディーが損傷し、その修理費用は16万9900円であった。

後遺障害等級
原告主張:7級4号
自賠責:不明
裁判所認定:7級4号
原告の主張する傷害及び後遺障害
傷害:頸椎捻挫等
後遺障害:言語障害、左上肢及び両下肢のしびれ等
素因(既往症)の内容 脊椎管狭窄症、変形性脊椎症、椎間板ヘルニア
言語障害での心因的要因
素因減額 20%

ア 本裁判例の内容
本裁判例は、原告が「本件事故により、頸椎捻挫等の傷害を負い、言語障害、
左上肢及び両下肢のしびれ等の後遺障害(7級4号)が残った。」と
主張したのに対し、被告が「①原告の後遺障害は、本件事故と因果関係がなく、
原告の左上肢及び両下肢のしびれ等の後遺障害については14級10号に
とどまる、②仮に、原告の症状と本件事故との因果関係が認められると
しても、原告には脊椎管狭窄症等の既往症が存在したことや心因性の面が
強いことから、相当額の減額をすべきである」として、後遺障害の
内容・程度、及び、相当因果関係を争い、素因減額を主張した事案である。

裁判所は、原告に脊椎管狭窄症等の既往症があったことが頸髄等損傷の
一因であったとしても、本件事故により原告の受けた衝撃は相当程度の
ものであったと考えられ、本件事故以前は特に頸部等に神経症状は
なかったことなどを考え併せると、本件事故により頸髄等損傷が
発生したものと認めるのが相当であるとして、原告が主張する後遺障害と
本件事故との相当因果関係を肯定した。

そのうえで、裁判所は、原告の言語障害、左上肢及び両足の知覚障害等の
症状は、本件事故前から脊椎管狭窄症、変形性脊椎症、椎間板ヘルニアと
いった症状が存在したところへ、本件追突事故による衝撃が加わって
損傷した頸髄等の障害に起因していると考えられ、本件事故による衝撃が
相当程度のものであったとしても原告の症状発現には右既往症の存在が
相当適度寄与したことは否定できないとして体質的要因の寄与を
肯定したうえで、原告の症状のうち最も問題となる言語障害の症状の
主たる原因が本件事故による頸髄損傷ではあるものの、原告自身の
心因的要因が症状の発現、増悪に影響しているものと認めざるを
得ないとして心因的要因の寄与も肯定した。そして、これら原告の症状に
対する原告側の要因を考慮すると、損害の公平な分担の見地からは、
被告に原告の損害の全てを賠償させることは相当ではなく、過失相殺の
法理を類推適用して、原告の損害額から2割を減額するのが相当であると
判示した。

イ 分析
本裁判例は、本件事故と後遺障害との相当因果関係を肯定したうえで、
身体的素因に加え心因的素因も考慮して、損害の公平な分担の観点から、
2割の素因減額を行った。

裁判所が2割の素因減額にとどめたのは、本件事故による衝撃が相当程度の
ものであったと考えられること、本件事故以前に頸部等に神経症状が
でていなかったことを重視したためと思われる。事故により被害者に大きな
衝撃が加わった場合、既往症がなくても重大な後遺障害が残る可能性が
否定できないことから、特別な事情がない限り、大きく素因減額される
可能性は低いと考えられる。




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