裁判例 京都地裁平成13年11月30日

裁判例 京都地裁平成13年11月30日
(自動車保険ジャーナル第1431号)
年齢 57歳
性別 男子
事故状況 停止車両に対する衝突事故。
後遺障害等級
原告主張:1級3号
自賠責:1級3号
裁判所認定:不明
原告の主張する傷害及び後遺障害
傷害:脊髄(頸髄)損傷
後遺障害:下肢不全麻痺
素因(既往症)の内容 心因的要因
素因減額 40%

ア 本裁判例の内容
本裁判例は、原告が「本件事故により、脊髄(頸髄)損傷を負い、
下肢不全麻痺の後遺障害(1級3号)が残った。」と主張したのに対し、
被告が「①後遺障害が存在しているかどうか疑わしい、②仮に後遺障害が
存在したとしても、原告の主張する症状はもっぱら心因性障害により
惹起されているものであり、本件事故との相当因果関係がない。
③仮に、本件事故と相当因果関係を肯定すべき後遺障害があるとしても、
本件ではヒステリーによる下肢麻痺を発症した精神的、心因的素因の
介在が本質的であり、本件事故と素因のいずれか一方では下肢麻痺が
生じなかったのであるから、その素因減額は5割を下らないというべきである」
として、後遺障害の有無及び相当因果関係を争い、素因減額を主張した
事案である。

裁判所は、理学所見を基礎にする限り、脊髄損傷の有無はにわかに
決し難い側面があるが、本件事故態様からすれば、原告が相当程度の頸椎の
過伸展・過屈曲運動を強いられたことは容易に推測でき、受傷直後から
腱反射の亢進、巧緻運動障害、知覚障害、四肢麻痺が急激に発症したこと、
さらには、脊柱管狭窄や頸椎退行変性等の助長因子があれば、微少外傷や
日常生活動作に伴う頸椎運動によってさえ脊髄証の発症があり得ること等を
考慮すれば、原告には程度は別にしても脊髄症状を起こすべき器質的損傷が
存在するものと推測され、この推認を覆す証拠は無く、原告の症状が
全て心因性障害に基づくとの被告の主張は採用することができないとして、
本件事故と脊髄損傷・両下肢運動障害との相当因果関係を肯定した。

そのうえで、裁判所は、現に発生している脊髄麻痺という重篤な
後遺障害に対する心因性要因の寄与の有無につき、複数の医師が
ことごとく原告の心因性要因の関与を指摘していること、原告が
本件事故により長年の家業が崩壊して生計の基盤が覆滅させられ、
介護の負担に加えて生計をも大きく妻に依存せざるをえなくなるなど
追い詰められ、その精神的負担と生来の性格が相乗したと推測される
反応性うつ状態が診断されていることからすれば、原告の両下肢運動障害には
心理的葛藤からの疾患逃避の機序が働き、これにより脊髄症状が増悪し、
ひいてはリハビリ訓練の効果が妨げられた結果、重篤な症状で
固定してしまったことを優に推測できると述べたうえで、
このような心因性要因の性質・内容等を考慮すれば、原告の対麻痺を
中心とする後遺障害は、本件事故による加害行為のみによって通常発生する
程度、範囲を超えた症状であり、その損害の拡大について原告の
心因性要因が加功していることに疑いを抱く余地はないが、
その契機となった原告に負荷された精神的負担も、もとはといえば
本件事故に由来することをも考慮すれば、損害を公平に分担させるという
損害賠償法の理念に照らし、民法722条の類推適用により、
損害額の4割を減額するのが相当であるといわねばならないと判示した。

イ 分析
本裁判例は、本件事故と後遺障害との相当因果関係を肯定したうえで、
心因的素因を考慮して、損害の公平な分担の観点から、
4割の素因減額を行った。

裁判所は、被害者に本件事故による加害行為のみによって通常発生する
程度を超えた症状が発生しており、かかる損害の拡大につき原告の
心因性要因が寄与していることは疑いがないとして、4割の素因減額を
行っている。裁判所は、心因的要因が寄与しているかどうかを
判断するに際し、複数の医師がことごとく心因的要因の関与を
指摘している点を重視したものと思われる。




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