裁判例 名古屋地裁平成18年10月24日

裁判例 名古屋地裁平成18年10月24日
(自動車保険ジャーナル第1680号)
年齢 37歳
性別 女子
事故状況
乗用車運転中の原告が、小型貨物車に追突された。本件事故による
被害車両の損傷は、後部に約20センチ程度の凹部を残したもので、
修理費用は総額12万9310円であった。

後遺障害等級
原告主張:1級3号
自賠責:14級10号(うつ病について)
裁判所認定:不明
原告の主張する傷害及び後遺障害
傷害:椎間板ヘルニア
後遺障害:移動、立体応用動作、食事動作、衣服着脱動作等の
日常生活動作全てを自力で行いえなくなった

素因(既往症)の内容 心因的要因
素因減額 80%

ア 本裁判例の内容
本裁判例は、原告が「①本件事故により発生または増悪した
椎間板ヘルニアが髄を圧迫したことにより、事故から3ヶ月以上経過して、
移動、立体応用動作、食事動作、衣服着脱動作等の日常生活動作全てを
自力で行いえなくなり1級3号の後遺障害が残った、②仮に、
上のような因果経過を経ていなくても、原告が本件事故により罹患した
うつ病により、現在の症状が生じたのであるから、本件事故との
相当因果関係は否定されない」と主張したのに対し、被告が
「①本件事故が軽微であることからすれば、本件事故により
椎間板ヘルニアが発生したとは考えられず、原告の症状と本件事故との
因果関係はない、②仮に、うつ状態から心身症のような状態になり
四肢麻痺を発症したとしても、本件事故が軽微であることからすれば、
うつ病以上の症状と本件事故との相当因果関係を認めることはできない、
③仮に、本件事故が椎間板ヘルニアの発症又は悪化に関与していたとしても、
事故が極めて軽微であることからすれば、原告が有していた身体的要因が
大きく、その寄与度は9割を下らない、④仮に原告の症状がうつ病に
起因するものであり、そのために原告の現在の症状が発症したとしても、
原告の心因的要因が大きく、その寄与度は9割を下らない」として、
相当因果関係を争い、素因減額を主張した事案である。

裁判所は、本件事故の直接的な衝撃によって原告が恒常的な脊髄傷害を
受けたり、これによって頸椎ヘルニアが生じたとも増悪したとも
認められないとしたうえで、原告の現在の症状は、本件事故によって
生じたしびれ等の症状が改善しないことや復職の目処がたたないことから
将来への不安を感じ、これがうつ病に発展して四肢の感覚異常を
発症したことにより生じたと考えられるとして、原告の現在の症状と
本件事故との間の相当因果関係を肯定した。

そのうえで、裁判所は、原告の現在の症状と本件事故との間に因果関係は
認められるが、本件事故の衝撃が軽微であったと推認されること、
原告の現在の症状は脊髄の器質的な障害によるものではないと
認められること、鑑定人が、原告の症状は、原告の心理的加重が
かなり大きな要因となっている旨の意見を述べていることからすれば、
原告の症状については、心因性の素因が大きく影響していると
認めざるをえず、そうすると、公平の見地から、民法722条2項を
類推適用し、原告の損害については、事故との因果関係を認めた上で、
8割を減額するのが相当であると判示した。

イ 分析
本裁判例は、本件事故と後遺障害との相当因果関係を肯定したうえで、
被害者の心因的要因が原告の症状に大きく影響しているとして、損害の公平な
分担を根拠に、8割の素因減額を行った。

裁判所は、重篤な後遺障害(日常生活動作全てを自力で行いえなくなった)が
発生したのは、脊髄の器質的な障害によるものではなく、被害者の心因性の
素因が大きく影響したものであるとしたうえで、事故と後遺症害との
相当因果関係を認めた。脊髄損傷を否定しながら、心因的要因の影響を
認定することで、事故と重篤な後遺障害との因果関係を認めていることは、
素因減額という割合的判断の手法が、相当因果関係の立証における証明度を
軽減する機能を有することを如実に示すものといえる。なお、被害者の症状が、
心因的要因によるところが大きい以上、高い割合で素因減額されることは
止むを得ないといえるであろう。




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