椎間板ヘルニアが問題となった事案

裁判例 東京地裁平成15年8月25日判決
(自動車保険ジャーナル第1548号)
年齢 61歳
性別 男子
事故状況
原告が右折するため信号待ちをしていたところ、ハンドル操作を誤った
被告運転の車両が対向方向から原告車に正面衝突し、原告車が大破した。

後遺障害等級
原告主張:2級
自賠責:12級12号
裁判所認定:12級12号
原告の主張する傷害及び後遺障害
傷害:頸髄不全損傷、胸椎・腰椎圧迫骨折
後遺障害:頸椎・腰椎可動域制限、左上下肢筋力低下・筋萎縮、
頚肩甲部・左臀部神経の圧迫強度

素因(既往症)の内容 頸椎椎間板の狭小化、骨棘の形成、
右手の震えをもたらす何らかの疾患

素因減額 5%

ア 本裁判例の内容
 本裁判例は、原告が「本件事故により、頸髄不全損傷、胸椎・腰椎圧迫骨折の
傷害を負い、頸椎・腰椎可動域制限、左上下肢筋力低下・筋萎縮、
頚肩甲部・左臀部神経の圧迫強度の後遺障害(2級)を負った」と
主張したのに対し、被告が「①原告の後遺障害の程度は12級12号
相当である、②原告には、初診病院の画像所見上、事故による脊髄の
器質的損傷すなわち脊髄の脱臼や骨折ないし挫滅を示す輝度変化は
認められず、また、本件事故直後から格別の神経症状も認められて
いないから、原告の現在の症状は本件事故に起因するものではない、
③仮に、等級表第12級を前提に賠償金を計上するとしても、原告には
椎間板の狭小化や骨棘形成が認められ経年的な変化による脊柱管の狭窄が
存在したこと、本件事故前から手の震え等の既往症が存在したことから、
原告の既往症等の素因の存在は無視し得ないから、30%程度の素因減額が
考慮されてしかるべきである」として、後遺障害の程度及び相当因果関係を
争い、素因減額を主張した事案である。

裁判所は、本件事故により、原告が頸髄不全損傷の傷害を負ったとまで
認めることはできず、原告の本件事故による後遺障害は、「頚項肩部、
腰・下肢痛・しびれ、左腕挙上困難、左腰臀部・下肢痛にて脱力、歩行障害」
という症状の限度で認めるべきであり、等級表12級12号の
「局部に頑固な神経症状を残すもの」にあたると認めるのが相当で
あるとして、上記後遺障害の限度で相当因果関係を肯定した。

そのうえで、裁判所は、原告の治療の長期化や後遺障害の残存については、
本件事故以前から存在した原告の頸椎椎間板の狭小化及び骨棘の形成のほか、
右手の震えをもたらす何らかの疾患が寄与していると判断されるところ、
この点は、民法722条2項の類推適用により、損害額を定めるに
あたって考慮すべきであるが、これらのうち、頸椎椎間板の狭小化及び
骨棘の形成は、いわゆる加齢に伴う退行変性によるもので、年齢を
重ねればほとんどの人に見られるものであるし、右手の震えをもたらす
何らかの疾患の内容・程度も判然としないことなどを勘案すると、
その寄与の度合いを過大視することはできず、減額割合としては、
上記損害額全体を通じて5%と認めるべきであると判示した。

イ 分析
本裁判例は、本件事故により頸髄不全損傷の傷害を負ったとは
認められないとし、12級12号の限りで本件事故と後遺障害との
相当因果関係を肯定したうえで、本件事故以前から存在した原告の
頸椎椎間板の狭小化及び骨棘の形成のほか、右手の震えをもたらす
何らかの疾患が存在していたことを理由に、損害の公平な分担の
観点から、5%の素因減額を行った。

裁判所は5%の素因減額を認めているが、治療の長期化や後遺障害の
残存に寄与したとした「頸椎椎間板の狭小化及び骨棘の形成」と
「右手の震えをもたらす何らかの疾患」につき、いずれも積極的に
評価していないこと(頸椎椎間板の狭小化及び骨棘の形成につき、
年齢を重ねればほとんどの人に見られるものであるとし、
右手の震えをもたらす何らかの疾患につき、内容・程度が
判然としないとしている)からすれば、素因減額を否定しても
おかしくない事案のように思われる。




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