横浜地方裁判所川崎支部 平成19年6月4日判決

横浜地方裁判所川崎支部 平成19年6月4日判決 
(自保ジャーナル第1711号) 
年齢 33歳
性別 男性
事故状況
原告が乗用車で信号待ち停車中、居眠り運転の被告乗用車に追突された。
後遺障害の等級
原告主張:併合10級。ただし、逸失利益については
0.2(11級喪失率)を主張
自賠責:併合10級
裁判所認定:11級
原告の主張する後遺障害の内容
頸椎捻挫、脊椎奇形
素因(既往症)の内容 椎間板狭小化・骨棘形成・脊柱管狭窄
素因減額 30%

ア 本裁判例の内容
本件において、被告は、①原告が7年前の事故で14級10号の後遺障害の
認定を受けていたこと、②レントゲン写真によれば椎間板狭小化・骨棘形成が
見られ、脊柱管が狭窄していること、③事故の翌年に原告が頸椎症性脊髄症の
診断のもとに前方固定術を行っているが、頸椎症性脊髄症は加齢性の
頸椎変化による脊髄圧迫を意味するものであること等から、本件は、
頸椎の加齢変化としての脊髄症であるとして、50%の素因減額を
すべきと主張した。

これに対し、原告は、①7年前の後遺症の影響は5年間あったとしても、
本件事故時点では後遺症の影響は全くなかった、②原告は、本件事故に
遭遇するまで精力的に仕事をこなしていたことを主張し、素因減額を
すべきでないと主張した。

裁判所は、医師の意見書から「椎間板狭小化、後方骨棘形成、
脊柱管狭窄という原告の既存障害からすると、原告の神経組織は損傷を
受けやすい状態にあったことを否定できない。」とした。しかし、原告が
本件事故前に重い荷物を担いだりフォークリフトを運転操作して大量の
荷物を運んだり、長時間の残業も難なく行っていたという事情から、
「神経組織が『非常に』損傷を受けやすい状態にあったとはいえない。」
として、被告の主張する加齢性だけから原告の症状が発生したものとは
いえないと判断した。

そして、裁判所は、①事故状況が重大であったともいえないこと、②原告が
受傷直後には神経症状がなく、受傷後2週間を経過した後から神経症状が
始まっていること、③入通院期間が長期に及び、後遺障害の程度も重いことを
指摘し、「原告の入通院治療期間が長期化し、後遺障害の程度が
重くなったのは、本件事故当時において加齢性変化によるC5/6の
椎間板狭小化と後方骨棘形成などの既存障害が存在したことに
起因しているということができる」とした。

そのうえで、裁判所は、素因減額をするにあたり、上記の事情に加え、
④原告が本件事故時において7年前の交通事故による後遺障害の影響は
受けていないこと、⑤本件事故に遭遇するまで原告が精力的に仕事を
こなしていたことも考慮して、3割を素因減額することが相当と判断した。

イ 分析
本裁判例は、①7年前の交通事故による14級10号の後遺障害、
②椎間板狭小等の既往症、③本件事故後における脊椎症性脊髄症の
手術を受けたこと等、本件事故による脊髄への影響以外に複数の要因が
絡まっている事案である。

裁判所は、それぞれの要因が原告の主張する後遺障害に与える影響に
ついて総合的に分析して、3割の素因減額を認定した。なお、裁判所は、
素因減額の認定にあたり、上記の既往症の他、事故状況、事故直後の
原告の症状、原告の本件事故当時の生活状況(原告は本件事故直前に
おいて精力的に仕事をこなしていたこと)等も判断材料に加えて
いることが注目される。




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