神戸地方裁判所 平成11年1月11日判決

神戸地方裁判所 平成11年1月11日判決 
(交民集31巻1号47頁)
年齢 事故時39歳
性別 男性
事故状況
原告が乗客としてタクシーに乗車し停止していたところ、被告運転の
車に追突された。

後遺障害等級
原告主張:5級
自賠責:非該当
裁判所認定:5級
原告の主張する後遺傷害の内容
頸髄損傷・右上肢がほとんど使えない状態、右足のけいれん等
素因(既往症)の内容 頸椎菅狭窄、右上下肢に障害
(もともと身体障害者等級5級の障害を有していた。)

素因減額 50%

ア 本判例の内容
本裁判例において、原告は、頸椎間狭窄及び上下肢に既往症のある原告が、
本件事故で痙攣及び足首関節・肘・母指に5級相当の後遺症を受けたと主張した。

これに対し、被告は、事故状況等からみて、原告の受傷は単なる頸部捻挫に
過ぎず後遺障害は存在しないこと、また原告の主張するような症状が
あるとしても本件事故とは因果関係がないと主張した。さらに被告は、
後遺障害及び本件事故との間の因果関係が認められるとしても、
損害の算定については本件事故以前から存在した障害を考慮すべきであると
主張した。

裁判所は、本件において、診療録・看護記録に重篤な症状を示す記載がないこと、
事故の1週間後には原告の希望で外泊が許可されていること
(通常、頸髄損傷が疑われる症例では、受傷後3週間は外出や外泊は
許されない。)等、原告の主張する症状の経過が脊髄損傷の一般的な
経過と異なるものではあるが、県立病院整形外科の医師が頸髄損傷と
診断していること、及び本裁判例における鑑定意見でも、上記医師の
脊髄損傷という診断を否定せず、また、本件事故との因果関係を完全に
否定することができないというものであったことから、原告の後遺障害と
本件事故との間の因果関係があると認めた。

そのうえで、裁判所は、原告が本件事故以前から上下肢に障害を
有していたこと、原告には本件事故以前から脊柱管狭窄が生じており、
頸髄損傷を起こしやすかったこと、及び本件で重篤な外傷はなかったうえ、
外傷性の頸髄損傷に見られる通常の経過をたどってはいないことから、
原告の既往症や素因は後遺障害の発生に大きな原因となっていると
解されることから、本件後遺障害の発生に50%は寄与しているものと
認定した。

イ 分析
本裁判例は、原告の主張する後遺障害について、被告が後遺障害の存在及び
因果関係を争い、さらに素因減額を主張した事案である。

裁判所は、事故状況が軽微な点や、本件の治療経過が頸髄損傷の一般的な
経過とは異なる点が認められるものの、医師が脊髄損傷と診断したこと、
また、鑑定意見でも医師の診断結果を否定せず、また本件事故との間の
因果関係も否定しなかったこと等から、後遺障害と本件事故との間の
因果関係を認めた。

もっとも、原告が本件事故以前から上下肢に障害を有していたこと、
及び頸椎管狭窄が生じており、頸髄損傷を起こしやすかったこと等から、
本件後遺障害の発生に50%は寄与しているものと認定した。

なお、本裁判例は、本件の治療経過が外傷性の頸髄損傷に見られる通常の
経過をたどってはいないという特殊事情について、後遺障害の存在や因果関係を
否定する事情としては用いず、素因減額の点で考慮したことが注目される。




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