裁判例 東京地裁平成19年12月20日判決(48)

裁判例 東京地裁平成19年12月20日判決(48)
(自動車保険ジャーナル第1743号)
年齢 57歳
性別 女子
事故状況
交差点において、直進しようとした原告車両と右折進行しようとした
被告車両が衝突した。原告車両は、被告車両と衝突後、コンクリートの
柱やブロック付近にも衝突した。

後遺障害等級
原告主張:4級
自賠責:14級10号
裁判所認定:12級12号
原告の主張する傷害及び後遺障害
傷害:外傷性脊髄損傷等
後遺障害:上肢知覚障害
素因(既往症)の内容 中度の脊柱管狭窄症
素因減額 20%

ア 本裁判例の内容
 本裁判例は、原告が「本件事故により、外傷性脊髄損傷等の傷害を負い、
上肢の知覚障害(4級)が残った」と主張したのに対し、被告が
「①原告が主張する傷害は本件事故との因果関係がない、②仮に因果関係が
認められるとしても、原告には、事故前から、第2、第3頸椎間の
右後方からの軽微な脊髄圧迫があったから2割の素因減額がなされる
べきである」として、傷害の存否を争い、素因減額を主張した事案である。

裁判所は、画像所見上、重篤な脊髄損傷に見られる変化等が
認められないことなどからすると、手指の巧緻運動障害、歩行障害あるいは
筋力低下による日常生活動作の制限が頸髄損傷によるものであるとは
いえないが、画像所見及び臨床所見を総合すると、顔面及び左半身の
しびれないし違和感を生ずる程度の頸髄損傷(頸髄不全損傷)が
本件事故により生じたことは否定し難く、局部に頑固な神経症状を
有するものとして、12級12号(現在の12級13号)に該当するものと
認められるとして、後遺障害等級12級12号の限度で相当因果関係を
肯定した。

そのうえで、裁判所は、①原告は、本件事故により頸髄不全損傷を
負ったものであるところ、原告の頸髄損傷は、画像上、骨折も脱臼も
伴わないものであり、本件事故前から存在していた軽度の脊髄圧迫
(脊柱管の狭窄)の存在がなければ頸髄損傷は起こらなかったと
いうべきであって、かつ、上記脊髄圧迫の存在が原告の受傷および
治療や後遺障害の残存に直接寄与しているものというべきであるから、
原告の人身損害は、本件事故と本件事故前から存在していた原告の疾患が
ともに原因となって発生したものであるといえ、被告にその人損の全部を
賠償させることは公平を失するから、賠償額を定めるにあたり、
民法722条の規定を類推適用して、原告の上記疾患(脊髄圧迫)を
素因として斟酌するのが相当である、②原告主張の人損のほとんどが
頸髄損傷に関連していること、原告の脊柱管狭窄の程度が極めて
軽微なものであったこと、原告車両の損傷程度が比較的大きいこと等を
総合的に考慮すると、素因減額の割合は、原告に生じた人損につき
2割とするのが相当であると判示した。

イ 分析
本裁判例は、12級12号の限りで本件事故と後遺障害との相当因果関係を
肯定したうえで、本件事故前から被害者に軽度の脊髄圧迫(脊柱管の狭窄)
が存在していたことを理由に、損害の公平な分担の観点から、
2割の素因減額を行った。

裁判所が、脊髄圧迫(脊柱管の狭窄)の存在がなければ頸髄損傷は
起こらなかったこと、及び、脊髄圧迫の存在が原告の受傷および治療や
後遺障害の残存に直接寄与していることを認めながら、2割の素因減額に
とどめたのは、脊髄圧迫(脊柱管の狭窄)の程度が軽微であったことを
重視したためであろう。




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