裁判例 東京地裁平成16年12月8日

裁判例 東京地裁平成16年12月8日
(自動車保険ジャーナル第1589号)
年齢 50歳
性別 男子
事故状況
停止していた原告車両に、時速5キロないし10キロで走行していた
被告運転車両が追突した。追突により、原告車両は約0.3メートル前方へ
押し出された。

後遺障害等級
原告主張:5級
自賠責:併合6級(7級4号、11級7号)
裁判所認定:併合6級
原告の主張する傷害及び後遺障害
傷害:頸髄不全損傷
後遺障害:脊柱変形、頸椎症に伴う神経症状(しびれや痛み)
素因(既往症)の内容 脊柱管狭窄
素因減額 30%

ア 本裁判例の内容
 本裁判例は、原告が「本件事故により、頸髄不全損傷の傷害を負い、
脊柱変形、頸椎症に伴う神経症状(しびれや痛み)の後遺障害(5級)が
残った」と主張したのに対し、被告が「本件事故当時、原告には先天性
及び後天性脊柱管狭窄があり、軽微な外傷であっても頸髄損傷が発生する
危険性が極めて高かったのであるから、7割の素因減額がなされる
べきである」として、素因減額を主張した事案である。

裁判所は、①原告が本件事故前から脊柱管狭窄の状態にあったことが
認められ、かつ、その原因には、加齢による変性だけでなく、先天的な
脊柱管狭窄も影響していること、②本件事故の規模が小さい
(原告車両の後部バンパーの変形の修理費用は8万円。被告車両には
全部バンパーに軽く擦った痕があるのみ。被告車両が追突した際、
原告車両は0.3メートル前方に押し出されたが、乗車していた原告自身は
前に押し出されたとは感じていない)にもかかわらず、後遺障害等級併合
6級にあたる後遺障害が残ったことからすると、本件事故前から
脊柱管狭窄症にあったことが影響しているといわざるをえないが、
③一方で原告は、本件事故当時、鳶杭打ち鍛冶工として稼動していたところ、
脊柱管狭窄に伴う症状が発現し治療を受けていたなどの事情は
認められないことから、30%の割合で素因減額するのが相当であると
判示した。

イ 分析
本裁判例は、本件事故と後遺障害との相当因果関係は争われておらず、
素因減額の程度のみが問題となった。裁判所は、被害者が本件事故前から
脊柱管狭窄症にあったことを考慮して、3割の素因減額を行った。

裁判所は、素因減額に肯定的な事情として、事故の衝撃に比較して重篤な
後遺障害が発生していること、被害者が先天的な脊柱管狭窄も
有していたことを指摘する一方で、素因減額に否定的な事情として、
事故前は既往症の影響を受けることなく稼動していたこと、既往症に
伴う症状が発現し治療を受けていたなどの事情が認められないことを
指摘している。裁判所が、どのような要素をもとに素因減額の割合を
判断しているのかを知るうえで、参考になる判例といえる。




  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ページトップへ

0120-949-753

このページの先頭へ