裁判例 福岡地裁平成13年3月9日判決

裁判例 福岡地裁平成13年3月9日判決
(自動車保険ジャーナル第1405号)
年齢 48歳
性別 男子
事故状況 停止中の原告車に被告車が追突した
後遺障害等級
原告主張:3級3号
自賠責:不明
裁判所認定:3級3号
原告の主張する傷害及び後遺障害
傷害:頭部打撲及び頸髄損傷
後遺障害:四肢麻痺(杖がなければ歩行すらできず、手、指にも力が入らず、
文字を書くこともできない状態となった)

素因(既往症)の内容 椎間板症、脊柱管狭窄症
素因減額 70%

ア 本裁判例の内容
 本裁判例は、原告が「本件事故により頭部打撲及び頸髄損傷の傷害を負い、
四肢麻痺となった(杖がなければ歩行すらできず、手、指にも力が入らず、
文字を書くこともできない状態となった)」と主張し、被告が
「①本件事故により原告が負った傷害は可逆性の脊髄外傷であるから、
必要な治療期間はせいぜい4週間程度であり、後遺障害は残存していない、
②仮に、原告が頸髄損傷を負ったとしても、それは、頸部椎間板症
(頸椎椎間板ヘルニア)、先天性椎間板症、頸椎症性脊髄症等の既往症
及び前方固定術を受けていたためであって、本件事故との間には
相当因果関係を認めることはできない、③仮に、本件事故と原告の
頸髄損傷との間に相当因果関係が認めることができたとしても、
原告は頸部脊柱管狭窄症等の深刻な頸椎疾患に罹患していたうえ、
頸椎前方固定術を受けていたという特異性が多大に寄与しているから、
過失相殺の規定を類推適用し、原告の損害の9割以上は減額される
べきである」として、後遺障害の存否、相当因果関係を争い、
素因減額を主張した事案である。

裁判所は、①本件事故後、原告にそれまでに発生していなかった症状が
生じていること、②事故直後のMRI検査で軽度の脊髄症状が
発生するかもしれない所見が認められること、③医師が本件事故直後に
訴えた上下肢の神経症状については本件事故により生じた可逆性の
脊髄外傷が原因であると推定していることから、頸髄脊柱管狭窄症や
前方固定術を受けていたことが傷害や後遺障害の一因となっていたと
しても、本件事故と傷害・後遺障害との間には相当因果関係があると
いうべきとした。

そのうえで、裁判所は、原告には、本件事故前から椎間板症、
脊柱管狭窄症の既往症があったこと、原告車の損傷の程度
(リヤボディーの交換、リヤロアーパネルの板金等合計約6万円の損害)
に照らせば、本件事故によって原告に強い外力が加わったとは考えにくく、
原告が平成6年には頸椎の前方固定術を受け、頸椎前方固定術を
施された部分の椎体は移植された骨によって固定され、柔軟性が落ちる
ことなどの原告の素因を併せ考えると、損害の公平な分担の観点からは、
被告に原告の損害の全てを負担させることは相当ではなく、
民法722条2項の類推適用により、損害額の7割を減額するのが
相当であると判示した。

イ 分析
本裁判例は、本件事故と後遺障害との相当因果関係を肯定したうえで、
被害者が椎間板症、脊柱管狭窄症に罹患していたことを考慮して、
損害の公平な分担を根拠に、7割の素因減額を行った。

裁判所は、本件事故によって原告に強い外力が加わったとは考えにくい
にもかかわらず被害者に重篤な後遺障害(3級3号)が発生したことを
重視し、事故の衝撃から通常生じうる後遺障害の程度との比較から、
既往症の寄与度を7割と高く評価したものと思われる。




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