裁判例 水戸地裁土浦支部平成16年2月20日判決

裁判例 水戸地裁土浦支部平成16年2月20日判決
(自動車保険ジャーナル第1537号)
年齢 49歳
性別 男子
事故状況 被告運転車両が原告運転車両に追突した
後遺障害等級
自賠責:併合4級(11級7号、5級2号)
原告主張:4級
裁判所認定:4級
原告の主張する傷害及び後遺障害
傷害:外傷性脊髄症、頸椎捻挫、頸椎脊柱管狭窄症
後遺障害:後遺障害等級4級の後遺障害
素因(既往症)の内容 脊柱管狭窄
素因減額 60%

ア 本裁判例の内容
本裁判例は、原告が「本件事故により外傷性脊髄症、頸椎捻挫、
頸椎脊柱管狭窄症の傷害を負い、後遺障害等級4級の後遺障害が残った」
と主張したのに対し、被告が「①本件事故直後の症状は軽度
(右手背と手掌の中度から軽度の知覚麻痺、頭部圧迫テストによる
頸部痛増強、右手しびれ)であったから後遺障害等級は12級程度である、
②原告の症状は、事故後に頸髄の除圧手術を受けて以降悪化しているが
(脊髄半側麻痺、軽度の頻尿、勃起障害)、これらは医療機関の
加害行為により発生した障害であり、本件事故と因果関係はない、
③本件事故前から脊柱管狭窄、後縦靱帯骨化症、椎間板ヘルニアが
存在し、本件事故を誘引として脊髄症状が発症したものであるから、
本件事故によって加えられた外力が軽微であったことも考慮すれば、
原告の素因が本件事故後の症状に強く影響したことは明らかであるから、
少なくとも5割の素因減額がなされるべきである」として、
後遺障害の内容・程度、相当因果関係を争い、あわせて、素因減額を
主張した事案である。

裁判所は、本件手術後の症状悪化の原因として病院の医療過誤が疑われる
ことは間違いないが、原告の頸椎には少なくとも著名な脊柱管狭窄、
椎間板ヘルニアが認められ、頸髄に圧迫障害が生じやすい脆弱な状態に
あったことからすれば、手術前後の何らかの契機によって頸椎の過伸展が
あった可能性も否定できず、必ずしも、病院の医師の重過失によって、
原告の手術後の症状が発症したものとは断定できないため、
本件事故によって、右上下肢運動障害、左上下肢温痛覚の消失、
右肩の運動痛、軽度の頻尿、勃起能力の低下の後遺症が生じ、
その後遺障害の程度は後遺障害等級4級に該当するものと認められる
として、事故との相当因果関係を肯定した。

そのうえで、裁判所は、本件事故の追突の衝撃自体がさほど大きなもので
あったとは認められず(事故後、原告は現場で20~30分程度
交通誘導を行い、現場に臨場した警察官にはけが人はいないと報告し、
30分から1時間程度現場検証に立ち会った後、自ら運転して病院に赴いた)、
本件手術前の原告の障害の状態も比較的軽微なものであったこと、
原告には、著名な脊柱管狭窄、椎間板ヘルニアが認められ、これらの障害は、
その性質上、外傷によって生じるものとは考えられず、本件事故当時既に
あったものと認められることからすれば、この既往症が治療期間の
長期化及び重篤な後遺障害の発生に大きく寄与したものと認められ、
原告の素因が本件事故による損害の拡大に寄与した割合は6割を
下ることはないというべきであり、損害の公平な分担との観点から、
原告が被った損害額から6割の素因減額をなすことが相当であると判示した。

イ 分析
本裁判例は、本件事故と後遺障害との相当因果関係を肯定したうえで、
被害者が脊柱管狭窄、椎間板ヘルニアに罹患していたことを考慮して、
損害の公平な分担を根拠に、6割の素因減額を行った。

裁判所は、事故直後の被害者の状態等を具体的に認定したうえで、
事故の衝撃がそれほど大きなものでないにもかかわらず、重篤な
後遺障害が発生したとして、6割の素因減額を行っている。裁判所は、
事故の衝撃から通常生じうる後遺障害の程度との比較から、既往症の
寄与度を導き出しているものと思われる。




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