裁判例 大阪地裁平成19年7月26日

裁判例 大阪地裁平成19年7月26日
(自動車保険ジャーナル第1721号)
年齢 51歳
性別 男子
事故状況
夜間、交差点における直進原告原付自転車と右折被告乗用車の出会頭衝突。
後遺障害等級
原告主張:1級3号
自賠責:1級3号
裁判所認定:1級3号
原告の主張する傷害及び後遺障害
傷害:脊髄損傷
後遺障害:四肢の高度痙性麻痺(起立位及び座位の保持が不可能、
肘屈筋以下の筋力低下、膀胱直腸障害)

素因(既往症)の内容 発育性脊柱管狭窄
素因減額 20%

ア 本裁判例の内容
 本裁判例は、原告が「本件事故により脊髄損傷の傷害を負い、
四肢の高度痙性麻痺が発生した(起立位及び座位の保持が不可能、
肘屈筋以下の筋力低下、膀胱直腸障害)」と主張したのに対し、
被告が「原告は、元来、発育性脊柱管狭窄の状態にあり、
加齢変性による椎間板の変性膨隆や黄色靱帯の肥厚が顕著であり、
脊髄は変形し圧迫を受けていた。原告は、本件事故により明らかな
骨傷を負ったわけではなく、事故自体による衝撃は軽微であったと
思われるのに、非骨傷性脊髄損傷を生じて重い後遺障害を残した
ものであって、素因が寄与していることは明らかであるから、
50%ないし70%の素因減額をすべきである」として、素因減額を
主張した事案である。

裁判所は、本件において、原告の重篤な症状の発生について
発育性脊柱管狭窄の寄与が認められる以上、素因としてこれを
斟酌することは明らかであるが、被告が主張する椎間板の変性膨隆や
黄色靱帯の肥厚は加齢変性にとどまるものであるから、素因減額の
対象たる疾病に該当すると認めるには足りないとして、発育性脊柱管狭窄
のみを素因減額の対象としたうえで、原告の発育性脊柱管狭窄は著しく、
正常成人男性の下限値を大幅に下回るのはもとより、頸椎症性脊髄症の
男性患者と比べても極めて狭小度が強いと認められる一方で、
本件は毎時40キロの速度で直進する原動機付自転車が毎時30キロの
速度で右折する四輪車と出会い頭に衝突した事案であり、原告において、
頸部ないしその周辺部に脱臼や骨折等の明らかな骨傷を負った訳ではないが、
衝突により5メートル先の路上に跳ね飛ばされるなど、本件事故による
衝撃もそれなりに強度であったと推認されることをも斟酌し、20%を
素因減額することとすると判示した。

イ 分析
本裁判例は、本件事故と後遺障害との相当因果関係は争われておらず、
素因減額の程度のみが問題となっており、裁判所は、発育性脊柱管狭窄症
のみを素因として考慮して、損害の公平な分担を根拠に、
2割の素因減額を行った。

素因減額の対象となる既往症を「疾病」にあたるかどうかという
基準で判断している点が特徴的であり、この点は平成8年10月29日の
最高裁判例の判断枠組に沿ったものといえる。裁判所は、被害者の
脊柱管狭窄の程度が著しいことを認定しながら、事故の衝撃がそれなりに
強度であったとして、2割の素因減額にとどめているが、被害者に重篤な
後遺障害(1級3号)が発生したことが、素因減額割合を2割に
とどめた一要因になっているものと思われる。




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