裁判例 松山地裁今治支部平成14年1月29日判決

裁判例 松山地裁今治支部平成14年1月29日判決
(自動車保険ジャーナル第1446号)
年齢 49歳
性別 男子
事故状況
乗用車運転停止中に後続車両に追突された。後続車両は時速20キロ程度の
速度で進行しており、急制動をかけたが間に合わなかった。

後遺障害等級
原告主張:8級2号
自賠責:不明
裁判所認定:不明
原告の主張する傷害及び後遺障害
傷害:頸髄不全損傷等
後遺障害:四肢の痺れ、歩行困難、頸部痛、両手指巧緻傷害、排便困難等
素因(既往症)の内容
本件事故の4年半前から頸椎の脊柱管狭窄が生じ、頸部痛を訴えて
断続的に通院加療していた。

素因減額 50%

ア 本裁判例の内容
 本裁判例は、原告が「本件事故により頸髄不全損傷等の傷害を負い、
四肢の痺れ、歩行困難、頸部痛、両手指巧緻傷害、排便困難等の
後遺障害(8級2号)を残した」と主張したのに対し、被告が
「原告は、本件事故当時、脊柱管が高度に狭窄し、頸髄を圧迫している
状態であったのであり、本件事故後に発症したとする原告の症状は、
この既存疾患によるものである」として、本件事故と後遺障害との
相当因果関係を争った事案である。

裁判所は、①事故態様や原告車及び被告車の損傷状況に照らすと、
本件事故の追突の衝撃自体は必ずしも大きなものとは窺われないが、
本件事故当時の原告の頸椎の脊柱管の狭窄状況からすると、
軽い事故でも脊髄に損傷を生じ、あるいは既に生じている損傷を
悪化させうると考えられることに加え、②本件事故前後の原告の
症状の経過並びに原告を長期間直接診察・治療した医師の判断内容・
知見に照らすと、本件事故後の原告の症状は、元々あった原告の
病的脊柱管狭窄もあって本件事故により脊髄を圧迫して損傷を来たした、
あるいは、既にあった脊髄損傷が本件事故により更に悪化したものと
推認することができ、原告の本件事故後の症状は本件事故と
相当因果関係にあるものというべきであるとして、相当因果関係を認めた。

そのうえで、裁判所は、原告には、本件事故の4年半前から頸椎の
脊柱管狭窄が生じ、頸部痛を訴えて断続的に治療しており、既往症は
一時的に治まっていたとしても、頸椎の変性は依然として残っており、
脊髄損傷を起こし易く、本件事故がなくても脊髄損傷が生じた可能性が
あったことに照らすと、原告の損害の発生及び拡大について、原告の
既往症が大きく寄与しているといえ、原告に生じた損害全額について
被告らに賠償を命ずることは公平の見地からして相当でないと判断し、
原告の本件事故前および本件事故後の症状経過等の諸事情を総合考慮して、
民法722条2項を類推適用して損害合計の5割を減じることとすると
判示した。

イ 分析
本裁判例は、本件事故と頸髄損傷・原告が主張する後遺障害との
相当因果関係を肯定したうえで、被害者が既往症(脊柱管狭窄症)を
有していたことを考慮して、損害の公平な分担を根拠に、
5割の素因減額を行った。

裁判所は、本件事故がなくても脊髄損傷が生じた可能性があったほど
被害者は脊髄損傷を起こしやすい状態であったことを前提に、原告の
既往症が損害の発生及び拡大に大きく寄与したと評価し、素因減額割合を
5割とした。本件事故がなくても脊髄損傷が生じた可能性があったほど
被害者の既往症の程度が甚だしいのであれば、より大きく
素因減額されてもおかしくない事案と思われる。本裁判例からは、
裁判所が素因減額割合を決定するにあたり、素因の結果に対する
事実的寄与割合のみを要素としているわけではないことが
窺えるのではないだろうか。




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