裁判例 京都地裁平成12年7月25日判決

裁判例 京都地裁平成12年7月25日判決
(自動車保険ジャーナル第1372号)
年齢 事故時64歳
性別 男子
後遺障害等級
原告主張:9級10号
自賠責:非該当
裁判所認定:12級12号
原告の主張する傷害及び後遺障害
傷害:頸髄不全損傷
後遺障害:上下肢不全麻痺等
素因(既往症)の内容
本件事故前から既に、骨棘の形成、椎間板突出による脊柱管狭窄と
いった変性があり、脊髄を著しく圧迫するようになっていた

素因減額 30%

ア 本裁判例の内容
本裁判例は、原告が「本件事故により頸髄不全損傷の傷害を負い、
上下肢不全麻痺等(9級10号)が残った」と主張したのに対し、
被告が「①原告の傷害は頸椎捻挫に過ぎず、神経症状の後遺障害が
存在すること自体が認められない、②仮に、神経症状の後遺障害が
認められるとしても14級10号に過ぎず、頸椎の強度の変形が
影響していることは明らかであるから、少なくとも50%の減額が
なされるべきである」として、後遺障害の発生を争い、素因減額を
主張した事案である。

裁判所は、原告の本件事故による直接の外傷の程度は頸椎捻挫に
とどまるというほかないとして、頸髄損傷ないし頸髄不全損傷を
負ったという原告の主張を排斥したうえで、頸椎捻挫による
後遺障害の内容・程度につき、原告は本件事故前から骨棘の形成、
椎間板突出による脊柱管狭窄といった変性が生じ、脊髄を著しく
圧迫するようになっていたことが認められ、本件事故による衝撃を
契機として、頸椎の変性による神経症状が顕在するに至ったもので
あるから、神経症状と本件事故との間には相当因果関係を
肯定することができ、本件事故による受傷の程度は、単純な頸椎捻挫の
程度にとどまるものではないとして、12級12号に該当する
後遺障害を認定した。

そのうえで、素因減額の点について、原告の症状は、既存の頸椎の変形により
生じ得る神経症状が本件事故を契機として発現したものと認められるところ、
原告は、第3・第4頸椎間前方固定術の既往歴があることから、
その上下の部位における頸椎の変形の程度は著しく、加齢に伴って当然に
その存在が予定されている程度を超えているというべきであるから、
原告の損害を全て加害者である被告に負担させることは、損害の公平な
分担という損害賠償の理念に照らして相当でないとして、過失相殺の
法理を類推適用し、被告に負担させるべき損害賠償額の算定に当たっては、
身体的素因の寄与を斟酌して、全体として30%の減額をするのが
相当であると判示した。

イ 分析
本裁判例は、頸髄不全損傷という傷害結果の発生を否定したが、
本件事故により頸椎捻挫による神経症状という後遺障害(12級12号)が
残存したことを認め、被害者の頸椎変形の程度が加齢に伴って当然にその
存在が予定されている程度を超えていることから、損害の公平な分担を
根拠に、3割の素因減額を行った。

裁判所は、加齢に伴って当然に存在が予定されている程度を超える要因を
被害者が有しており、その要因が損害の発生または拡大に寄与していると
評価している。本裁判例からは、かかる場合に、加害者にその損害の全てを
負担させるのはかえって公平に欠けるという、裁判所の価値判断をうかがうことができる。




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