事案の類型ごとの検討

a 死亡事案
死亡事案においては,死亡逸失利益,死亡慰謝料が問題となると思われるが,
これらについては,いずれも判例によって,死亡時に本人に発生・確定し,
これが相続人に相続されるものとされているため,後に損害が定期的に
発生するということはない。従って,死亡逸失利益について定期金賠償に
よる支払いを認めた裁判例も一部あるものの(東京地判平成15.7.24),
下記裁判例のように,死亡事案については,定期金賠償は
否定されることが多い。

大阪高判平成17.1.20
「本件において原告春子が請求している逸失利益は,亡太郎が本件事故に
遭わなければ将来得たであろう収入を得ることができなかったことによる
損害を,亡太郎の相続人である原告春子が相続したというものであるところ,
この損害は,亡太郎の死亡時に亡太郎に発生し,その額も確定し具体化
しているのであって,それを原告春子が相続したというにすぎず,
後遺障害の逸失利益や将来の介護費用のように,将来に具体化し,
その額が変動する性質のものではなく,事情変更に対応するという
定期金賠償に本来期待されている効用もない。そして,後述のとおり,
亡太郎の逸失利益につき,亡太郎が大学院を卒業してから67歳まで
大学卒の男子労働者の平均賃金を毎年得られたものと推定し,その額から
中間利息を控除して損害額を算定しているが,これは,死亡時の損害の
評価をするに当たって,上記のように収入額を推定(擬制)し,
中間利息を控除して,死亡時における現価に引き直しているにすぎす,
将来発生し,具体化する損害を現価算定しているものではない。

そうすると,死亡逸失利益について定期金による賠償を認めることは,
理論的整合性を欠き,その実益もなく,許されないものと解すべきである。」

b 後遺障害事案
その性質上も,民訴法117条1項の文言からも,後遺障害逸失利益について
定期金賠償方式が認められうることについては特に問題はないと思われる。

また,将来介護費用についても,まさに将来的に発生する損害であり,
その支払方法として定期金賠償によることについて特段の問題はない。

c 申立ての要否
処分権主義との関係から,原告がその支払方法について一時金賠償による
ことのみを求め,定期金賠償によることを求めていない事案について,
裁判所が独自に定期金賠償による支払を認めることはできないとされている。

最判昭和62.2.6
損害賠償請求権者が訴訟上一時金による賠償の支払を求める旨の申立を
している場合に,定期金による支払を命ずる判決をすることはできない
ものと解するのが相当であるから,定期金による支払を命じなかった
原判決は正当である。

他方で,原告が定期金賠償によることのみを求めた場合でも,
裁判所は一時金賠償を認めることができるとした裁判例がある
(名古屋地判平成19.7.31(被告は定期金賠償方式によることを争った))

名古屋地判平成19.7.31
原告らの死亡逸失利益の定期金賠償方式による請求は,将来の一時点
(被害者の命日)において具体化すると考える損害額をその時点に
おいて支払うことを求めるものであるが,一時金での賠償請求は
それらを含めたすべての損害が不法行為時に発生し具体化するものと
考えそれらの損害を中間利息を控除して現在価額に換算したものであるから,
いずれの請求も質的には同一のものであって異なるものではなく,
定期金賠償方式による損害賠償請求に対して,一時金での賠償を
認めたとしても,当事者が申し立てていない事項について判決した
ことにはならない。また,一時金賠償とすることによって中間利息の
控除方法が問題となりうるが,本件においては一部は一時金賠償での
請求がなされており,一時金賠償の主張の中で双方攻撃防御を
尽くしているのであって,当事者の手続保障を害することにもならない。




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