定期金賠償の意義および長所・短所

a 定期金賠償の意義
定期金賠償とは,「一定期間又は不確定期間中の回帰的な給付として
義務付けられた損害賠償」と定義され(楠本安雄「定期金賠償と損害論」
人身損害賠償論189頁),判決によってその支払を定期金賠償による
こととされた場合,その判決で定められた一定の金額を定期的に
支払うこととなる。

b 長所
① 実態に即した妥当な金額を算定できる
損害賠償金の支払いについて,一時金賠償の方法による場合,
その総額を口頭弁論終結時の時点において認定しなければならないため,
将来要する費用について推測しなければならず,将来介護保険制度等に
大きな変更が生じたような場合,現実の損害額と乖離が生じることと
なってしまう。

これに対して,定期金賠償の方法による場合,将来,賠償額を基礎づける
事実に著しい変更が生じた場合,確定判決変更の訴えを提起することが
できるため(民訴法117条),現実の損害額をより反映した賠償が可能となる。

② 余命認定の問題を回避できる
事故の被害者が,遷延性意識障害患者である場合などにおいて,
将来介護費用について,一時金賠償の方法による場合,簡易生命表に
よって余命を認定することが多い と思われるが,そもそも
遷延性意識障害患者の余命を簡易生命表どおりに認定することが適切なのか
という問題がある。そのため,被害者の余命が大きな争点となることが多い。

この点,定期金賠償の方法による場合,被害者が簡易生命表に従った
余命もしくは死亡時のいずれか早い時期までの間とすればよく,
一時金賠償方式よりも現実の損害を反映することができる。

③ 中間利息控除の問題を回避できる
将来にかかる損害額を一時金賠償の方法によって支払いを受ける場合,
年5分のライプニッツ方式により中間利息が控除されることとなるが,
利率が現在の事情に比して高いのではないかという観点から
ライプニッツ方式によるべきではないとの主張がなされることがある 。

これに対して,定期金賠償の方法による場合,中間利息の問題は生じない。

c 短所
① 履行の確保という問題
一時金賠償方式による場合,現状の支払義務者の資力のみが問題となるが,
定期金賠償方式による場合,将来において支払義務者の資力が悪化した場合,
適切な損害賠償が図れないという問題がある。交通事故による損害賠償請求に
おいては,加害者が任意保険に加入していることが多いと思われるが,
それでも中小の保険会社である場合,将来における倒産の可能性という
問題は残る(後掲判例①)

② 管理コスト
定期金賠償方式による場合,支払義務者は,将来にわたって定期的に
その支払を管理しなければならず,その管理コストがかさむという点が
挙げられる。

③ 紛争の終局的解決が図れない
一時金賠償方式による場合,その全額が支払われた時点で,被害者は
その賠償金をもとに,生活の再建を図っていくこととなるが,
定期金賠償方式による場合,支払が将来にわたって継続していくことから,
これに伴って被害者の被害感情も継続してしまう恐れがある。




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